<読んだ本 2014年4月>
冨岡製糸場が世界文化遺産に登録される見通しとなった。
なんとも嬉しいニュースである。諮問機関から「パーフェクトに近い」という高い評価を受けたというからもう安心していいだろう。わたしは二年前に訪れたのだが、近辺には駐車場とトイレが少なかったので、大量の客を受け入れられるような整備が急務であろう。
ところで、わたしの仕事場の移転が決まった。深川から品川へ、お盆のころに移転するのである。
となれば深川で観る桜も最後となる。
今年の桜はあっという間に散ってしまったが、よく探すとまあまあのが一本、会社の脇に見つかった。
枝垂れ桜のほうがまだ元気で綺麗である。
最後となると、ある種感慨深いものがあった。
駆け足で進んでいった桜前線は、いま函館あたりを走っているようだ。
さて、今月に読んだ本ですが、4月はまあまあの8冊、累計で28冊です。
1.○黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎 山本兼一 講談社文庫
2.○だから荒野 桐野夏生 毎日新聞社
3. ○杜若艶姿 酔いどれ小藤次十二 佐伯泰英 幻冬舎文庫
4. ◎利休にたずねよ 山本兼一 PHP文芸文庫
5. ○野分一過 酔いどれ小藤次十三 佐伯泰英 幻冬舎文庫
6. ○掏摸(スリ) 中村文則 河出文庫
7. ◎信長死すべし 山本兼一 角川書店
8.○千両花嫁 とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
深川の仕事場の裏側が仙台掘川である。桜もほとんど散ってしまった。
酔いどれ小藤次を読んでいたら、その川のことが書かれていた。
『深川を東西に貫く仙台掘の由来は、仙台藩伊達家の蔵屋敷が大川の合流部の北側にあったためだ。
初代藩主の伊達政宗は、人口が急増し、一大消費地になりつつある江戸に米を売れば利が上がる
ことに着目し、積極的に新田開発に努め、年貢以外の余剰米を買い付ける買米制を奨励した。
ために寛永九年(1632)には、
「今年より奥州仙台の米穀初めて江戸に廻る。今に江戸の三分の二は奥州米の由なり」
という活況を呈することになった。
仙台からの江戸廻米を目当てに、蔵屋敷の周辺の仙台堀沿いには米問屋が櫛比していた。』
佐伯泰英著「酔いどれ小藤次留書 杜若艶姿」(幻冬舎文庫)より
今月読んだなかでは「利休にたずねよ」と「信長死すべし」が群を抜いて面白かった。
二冊とも同じ構成の書き方をしているのだが、お茶を齧ったこともあり、一時利休が書かれた本を読み漁ったわたしには、時系列を逆に書いていく「利休にたずねよ」についつい軍配をあげてしまう。
北野天満宮で催された大茶会で秀吉が利休に問うた。
『「そのほうは、なんと見た。ただ茶を喫するばかりのことに、なぜ、かくも人が集まってくる。
なぜ人は茶に夢中になる」
利休はゆっくりうなずいた。みなが利休を見ている。
「それは、茶が人を殺すからでございましょう」
真顔でつぶやいた。
「茶が人を殺す・・・・・・とは、奇妙なことをいう」
秀吉の目が、いつになく抉るように利休を見すえている。
「はい。茶の湯には、人を殺してもなお手にしたいほどの美しさ、麗しさがあります。道具ばかりで
なく、点前の所作にも、それほどな美しさを見ることがあります」
「なるほどな・・・・・・」
「美しさは、けっして誤魔化しがききませぬ。道具にせよ、点前にせよ、茶人は、つねに命がけで
絶妙の境地をもとめております。茶杓の節の位置が一分ちがえば気に染まず、点前のときに置いた
蓋置の場所が、畳ひと目ちがえば内心身悶えいたします。それこそ、茶の湯の底なし沼、美しさの
蟻地獄。ひとたび捕われれば、命を縮めてしまいます」
話しながら利休は、じぶんがいつになく正直なのを感じていた。
「おまえはそこまで覚悟して茶の湯に精進しておるか」
うなずいた秀吉が、溜息をついた。』
なんか、急に抹茶が飲みたくなってきた。
→「もうすぐ世界遺産、冨岡製糸場」の記事はこちら
→「読んだ本 2014年3月」の記事はこちら
冨岡製糸場が世界文化遺産に登録される見通しとなった。
なんとも嬉しいニュースである。諮問機関から「パーフェクトに近い」という高い評価を受けたというからもう安心していいだろう。わたしは二年前に訪れたのだが、近辺には駐車場とトイレが少なかったので、大量の客を受け入れられるような整備が急務であろう。
ところで、わたしの仕事場の移転が決まった。深川から品川へ、お盆のころに移転するのである。
となれば深川で観る桜も最後となる。
今年の桜はあっという間に散ってしまったが、よく探すとまあまあのが一本、会社の脇に見つかった。
枝垂れ桜のほうがまだ元気で綺麗である。
最後となると、ある種感慨深いものがあった。
駆け足で進んでいった桜前線は、いま函館あたりを走っているようだ。
さて、今月に読んだ本ですが、4月はまあまあの8冊、累計で28冊です。
1.○黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎 山本兼一 講談社文庫
2.○だから荒野 桐野夏生 毎日新聞社
3. ○杜若艶姿 酔いどれ小藤次十二 佐伯泰英 幻冬舎文庫
4. ◎利休にたずねよ 山本兼一 PHP文芸文庫
5. ○野分一過 酔いどれ小藤次十三 佐伯泰英 幻冬舎文庫
6. ○掏摸(スリ) 中村文則 河出文庫
7. ◎信長死すべし 山本兼一 角川書店
8.○千両花嫁 とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
深川の仕事場の裏側が仙台掘川である。桜もほとんど散ってしまった。
酔いどれ小藤次を読んでいたら、その川のことが書かれていた。
『深川を東西に貫く仙台掘の由来は、仙台藩伊達家の蔵屋敷が大川の合流部の北側にあったためだ。
初代藩主の伊達政宗は、人口が急増し、一大消費地になりつつある江戸に米を売れば利が上がる
ことに着目し、積極的に新田開発に努め、年貢以外の余剰米を買い付ける買米制を奨励した。
ために寛永九年(1632)には、
「今年より奥州仙台の米穀初めて江戸に廻る。今に江戸の三分の二は奥州米の由なり」
という活況を呈することになった。
仙台からの江戸廻米を目当てに、蔵屋敷の周辺の仙台堀沿いには米問屋が櫛比していた。』
佐伯泰英著「酔いどれ小藤次留書 杜若艶姿」(幻冬舎文庫)より
今月読んだなかでは「利休にたずねよ」と「信長死すべし」が群を抜いて面白かった。
二冊とも同じ構成の書き方をしているのだが、お茶を齧ったこともあり、一時利休が書かれた本を読み漁ったわたしには、時系列を逆に書いていく「利休にたずねよ」についつい軍配をあげてしまう。
北野天満宮で催された大茶会で秀吉が利休に問うた。
『「そのほうは、なんと見た。ただ茶を喫するばかりのことに、なぜ、かくも人が集まってくる。
なぜ人は茶に夢中になる」
利休はゆっくりうなずいた。みなが利休を見ている。
「それは、茶が人を殺すからでございましょう」
真顔でつぶやいた。
「茶が人を殺す・・・・・・とは、奇妙なことをいう」
秀吉の目が、いつになく抉るように利休を見すえている。
「はい。茶の湯には、人を殺してもなお手にしたいほどの美しさ、麗しさがあります。道具ばかりで
なく、点前の所作にも、それほどな美しさを見ることがあります」
「なるほどな・・・・・・」
「美しさは、けっして誤魔化しがききませぬ。道具にせよ、点前にせよ、茶人は、つねに命がけで
絶妙の境地をもとめております。茶杓の節の位置が一分ちがえば気に染まず、点前のときに置いた
蓋置の場所が、畳ひと目ちがえば内心身悶えいたします。それこそ、茶の湯の底なし沼、美しさの
蟻地獄。ひとたび捕われれば、命を縮めてしまいます」
話しながら利休は、じぶんがいつになく正直なのを感じていた。
「おまえはそこまで覚悟して茶の湯に精進しておるか」
うなずいた秀吉が、溜息をついた。』
なんか、急に抹茶が飲みたくなってきた。
→「もうすぐ世界遺産、冨岡製糸場」の記事はこちら
→「読んだ本 2014年3月」の記事はこちら
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