温泉クンの旅日記

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姨捨の絶景

2014-05-04 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <姨捨の絶景>

 戸倉上山田温泉はわたしの好きな温泉である。
 こんなにいい温泉地なのに、どうしてブレイクしないのか不思議でならない。



 今回は夜遅い到着なので素泊まりで泊った。なじみになった小体な蕎麦屋「舞鶴」で、ちろりで温めた燗酒を二、三杯呑んだあとで遅い夕食をとった。



 朝風呂をたっぷり堪能してから、コンビニでパンを買って軽く朝食をとり、前から行ってみたかった姨捨(おばすて)に向かった。



 姨捨駅は、戸倉上山田温泉から車で十五分くらいである。
 山の中腹、標高五百五十メートルの高さがあるのでホームからは善光寺平の絶景が一望できる。





 長楽寺の持田である四十八枚田に映る月は「田毎の月」と呼ばれ、日本三大名月に数えられる。



 見渡す限りの善光寺平は、あの武田信玄と上杉謙信が十年以上、五度繰り返したといわれる「川中島の戦い」の場である。
 さすがに「足を延ばして「訪れて見たい駅」の全国第二位である。ちなみに一位は北九州の門司港駅だ。
 夜景や、紅葉、初日の出にも人気があるデートスポットという。



 全国各地に姨捨伝説にはいろいろあるのだが、姨捨駅にあった民話の「姨捨山(おばすてやま)」は長いがなかなか読ませてくれた。

  『昔、年寄りの大嫌いな殿様がいて、「六十歳になった年寄りは山に捨てること」というおふれを
   出しました。殿様の命令には誰も逆らえません。親も子も、その日がきたら山に行くものと
   あきらめていました。

   ある日のこと、一人の若い男が、年老いた母親を背負って山道を登っていきました。深い悲しみを
   振り払うようにただ夢中で。
   ふと気づくと背中の母親が「ボキッ、ボキッ」と木の枝を折っては道ばたに捨てています。男は
   不思議に思いましたが、何も聞かずにそのまま歩いてゆきました。
 
   年寄りを捨てるのは深い深い山奥です。男は母親を残して一人帰るころには、もう日もとっぷりと
   暮れて、あたりは真っ暗闇。男はすぐさま道を見失って、母親のところへ引き返しました。
   母親は静かに言いました。「さっき、木の枝を折ってきた、それを辿ってお帰り。」子を思う
   親の深い愛情を、今更ながら知った男は、ついに殿様の命令にそむく覚悟を決め、母親を家に
   連れて帰りました。

   それからしばらくして、隣の国の殿様が、この国の殿様へ使いをよこしました。「灰で縄を綯え。
   できなければお前の国を攻め滅ぼす。」家来の誰に聞いても解らない殿様は困りはてて、国中に
   おふれを出しました。それを知った男はひそかに隠していた、母親に聞くと「そんな事は造作も
   ない、塩水で浸したわらで縄を綯って焼いてごらん」と教えました。男は教えられたとおり「灰の
   縄をつくり、殿様に持ってゆきました。しかし、隣の殿様はまた難問を突きつけました。曲がり
   くねった細い穴の開いた玉に糸通せというものです。今度も男は「穴の一方に、はちみつをぬり、
   反対側の穴から糸をいわえつけた蟻を入れなさい。」と母親に教えられて、糸を通すことができ
   ました。

   次々に難問を解かれた隣の殿様は「こんな知恵のあるものがいる国と戦っても勝てるわけがない」
   と、攻撃するのをあきらめました。
   たいそう喜んだこの国の殿様は、男を城へよび、「褒美を取らす、何でもほしいものを言うがよい」と、
   言いました。「褒美は、・・・・・・」、男は決心して母親のことを話しました。

  「なるほど、年寄りと云うものはありがたいものだ。」殿様は自分の考えが間違っていたことに
   気づき、すぐさまお年寄りを捨てることをやめるようにおふれを出しました。
   それからは、どこの家でも年寄りを大切にし、仲良く暮らすようになりました。』


 この民話、とにかくハッピーエンドが気にいった。

 珈琲が飲みたくなってきたので喫茶店がある戸倉駅に車を走らせた。





 構内にあるコーヒースタンドで、煙草に火を点け旨い珈琲をゆっくり味わった。意表をついた煎餅のサービスが微笑ましい。




  →「門司港驛、しばしの別れ」の記事はこちら
  →「戸倉上山田温泉(1)」の記事はこちら
  →「戸倉上山田温泉(2)」の記事はこちら
  →「くるまやラーメン」の記事はこちら

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