<伊豆で九州宿(1)>
明け方、小鳥の囀りで眼を覚ました。
いつものような都会の騒音で起きるのとはまるで違う、じつに爽快な朝の目覚めだ。
小鳥たちの囀りに混じって、よく通る鴬の鳴き声も聞こえて一瞬、自分がどこにいるかわからなくなる。

「八幡野温泉郷 きらの里」という伊豆高原の宿なのだが、まるで九州の黒川温泉にいるような錯覚がある。
「いやぁ・・・この宿、ちょっと気にいってしまったなあ」
十年くらい前から存在は知っていたが、九州の宿をよく知っているわたしはどうせ「まがいもの」の宿だろうと鼻にもかけなかったのである。
時計をみるともうすぐ五時になる。
タオルを持ち部屋を出て鍵を掛け、外廊下にある階段を降りようとする足がぴたりと止まる。
リスが階段の手すりをひょこひょこと上がってくる。うぅ・・・可愛い。
階段の手すりをあがりきり、外廊下の幅の狭い手すりの上を軽やかに無音で駆けていく。

杜のなかに三つ点在する露天風呂はすべて空いていた。

三番の風呂の鍵をとり、奥に歩く。一番奥にあるのだ。
鴬の鳴き声がする。
周りに人がいないのを確認して、得意の物真似の封印を解く。
「ケキョケキョケキョ、ホー、ホケキョー!」
部屋の窓からしたかったのだが、両隣の客に遠慮したのだ。
「・・・・・・」
鴬が鳴きやんで、小さな頭で考え込んでいるようだ。
「ホー、ホケキョオー!」
だいぶ近くにきたようだ。自分の縄張りを突然荒らされて怒っているのかもしれない。ふふふ。面白い。鴬クンと「秘密の会話」を交わしてしばらく遊んであげる。

三番の棟の鍵を開けて中に入ると、作務衣を脱ぎすて、掛け湯をして浴槽に身を沈めていく。絶妙の熱め、好みの湯温である。
参の湯、岩に囲まれた湯船の「岩座」。

三方の壁に欄間がしつらえてあって、ずらせば木洩れ日を取り入れられる。


昨日、待ち時間はかかったが三つある露天風呂すべてに入った。ついでにあと二つの露天風呂も書いておこう。
壱の湯、巨石をくり抜いた湯船の「石匠」。

弐の湯、壁に竹をつかっている「竹仙」。

そろそろ一度戻って冷たい水を飲んでから、昨日挽いておいた珈琲を慎重丁寧にドリップして朝のコーヒータイムと洒落こむとしよう。

自分で豆から挽いて飲むのはラビスタ函館ベイ以来だ。
― 続く ―
→「秘密の会話」の記事はこちら
→「ラビスタ函館ベイ(1)」の記事はこちら
→「ラビスタ函館ベイ(2)」の記事はこちら
→「小野上温泉(1)」の記事はこちら
→「小野上温泉(2)」の記事はこちら
明け方、小鳥の囀りで眼を覚ました。
いつものような都会の騒音で起きるのとはまるで違う、じつに爽快な朝の目覚めだ。
小鳥たちの囀りに混じって、よく通る鴬の鳴き声も聞こえて一瞬、自分がどこにいるかわからなくなる。

「八幡野温泉郷 きらの里」という伊豆高原の宿なのだが、まるで九州の黒川温泉にいるような錯覚がある。
「いやぁ・・・この宿、ちょっと気にいってしまったなあ」
十年くらい前から存在は知っていたが、九州の宿をよく知っているわたしはどうせ「まがいもの」の宿だろうと鼻にもかけなかったのである。
時計をみるともうすぐ五時になる。
タオルを持ち部屋を出て鍵を掛け、外廊下にある階段を降りようとする足がぴたりと止まる。
リスが階段の手すりをひょこひょこと上がってくる。うぅ・・・可愛い。
階段の手すりをあがりきり、外廊下の幅の狭い手すりの上を軽やかに無音で駆けていく。

杜のなかに三つ点在する露天風呂はすべて空いていた。

三番の風呂の鍵をとり、奥に歩く。一番奥にあるのだ。
鴬の鳴き声がする。
周りに人がいないのを確認して、得意の物真似の封印を解く。
「ケキョケキョケキョ、ホー、ホケキョー!」
部屋の窓からしたかったのだが、両隣の客に遠慮したのだ。
「・・・・・・」
鴬が鳴きやんで、小さな頭で考え込んでいるようだ。
「ホー、ホケキョオー!」
だいぶ近くにきたようだ。自分の縄張りを突然荒らされて怒っているのかもしれない。ふふふ。面白い。鴬クンと「秘密の会話」を交わしてしばらく遊んであげる。

三番の棟の鍵を開けて中に入ると、作務衣を脱ぎすて、掛け湯をして浴槽に身を沈めていく。絶妙の熱め、好みの湯温である。
参の湯、岩に囲まれた湯船の「岩座」。

三方の壁に欄間がしつらえてあって、ずらせば木洩れ日を取り入れられる。


昨日、待ち時間はかかったが三つある露天風呂すべてに入った。ついでにあと二つの露天風呂も書いておこう。
壱の湯、巨石をくり抜いた湯船の「石匠」。

弐の湯、壁に竹をつかっている「竹仙」。

そろそろ一度戻って冷たい水を飲んでから、昨日挽いておいた珈琲を慎重丁寧にドリップして朝のコーヒータイムと洒落こむとしよう。

自分で豆から挽いて飲むのはラビスタ函館ベイ以来だ。
― 続く ―
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→「ラビスタ函館ベイ(2)」の記事はこちら
→「小野上温泉(1)」の記事はこちら
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