<大沢温泉 岩手・花巻>
③温泉
自炊部棟の客がはいれる温泉は四つである。
日帰り入浴客もたぶん同じで、料金は現在500円である。四つはいれるから安
い。
山水閣の豊沢の湯、自炊棟の奥にある混浴露天の大沢の湯、同じく自炊棟の薬師
の湯、別館菊水館の南部の湯。あとひとつの山水閣の内湯はそこに宿泊したひとだ
けだ。さらに山水閣には、貸切露天風呂もあるらしい。
泉質は硫化水素を含むアルカリ性単純泉。効能は神経痛、リウマチ、関節痛、筋
肉痛、腰痛、婦人病、胃腸病、糖尿病、冷え性、病後回復などであり、あの高村
光太郎も湯治に訪れ「ここは本当の温泉の味がする」と記したそうだ。
このうち豊沢の湯と薬師の湯は前回花巻温泉郷に来たときにはいっている。たし
かそのときは「豊沢の湯」の川に面したガラス戸はすべて外されていたから夏だっ
たのだろう。
(豊沢の湯)
川向こうの菊水館の檜の内風呂にとりあえず行ってみる。
渓流にかけられた橋を歩いていたら左手に混浴露天風呂が丸見えで、若い男性数
名のなかに、若い女性が一名いてびっくり。連れの男性のほうに身を寄せているの
だが、肌の白さに眼が眩む。
(南部の湯)
南部の湯は四、五人ぐらいが適当な浴槽である。先客は二人だった。かけ湯を
たっぷりすると浴槽にゆっくり沈めた。檜の香りが温泉の匂いを引き立て、その
二つが微妙に混ざって、なんともいえない満足感が鼻から身体の隅々に広がって
いく。硫化水素の匂いはさほどしなかった。
帰りに橋をゆっくり渡りながらふたたび眼を楽しませ・・・じゃなかった眩ませ
ながら部屋に戻った。
六時半過ぎ、新館の豊沢の湯に行き軽く浴びると、そのまま自炊棟奥のレイの
混浴露天風呂へ向かう。
露天風呂に面したところに簡易な更衣棚が壁にあった。女性には更衣室が別に
ある。
思ったより広く深い。二、三十人はまずだいじょうぶであろう。川に近いへりの
ほうに進むと、ところどころ熱い源泉の流れが脚に当たる。残念というか幸いと
いうか男ばっかりである。へりにたどり着いたところで、温泉をゆっくり楽しむ。
(大沢の湯)
二月に突然水が溜まって激痛を起こした右膝を伸ばしたり縮めたり、長年の頚椎
の爆弾をなだめるために肩を支点に腕をゆっくり回したりする。そうそう、わたし
は湯治がそもそもの目的なのだ。
「やだあ! ここ混浴なのぉ?!」
男ばかりだったので安心してくつろぎきっていると、女性混じりの四、五人の
若者連れがやってきてもめた。入浴中の男連中もさりげなく脚を組んだり、タオル
を岩にのせていたものはタオルをとり、微妙に向きを変えた。
「恥ずかしいし、どうしよう」
「水着でも持ってきてれば、な」
女は入りたい、連れのカレシと思われる男はなんとかやめさせたい。このカレシ
の気持ち、わたしにはよくわかる。わたしだったら絶対あきらめさせるところだ。
連れの他の男たちは自分の彼女でもなく気楽なものだから「バスタオルでも巻い
て入ればいいじゃん」という。
「そう・・・そうね。そうするわ」
そう言うと、カレシの反対する言葉が出る前に彼女は更衣室にはいってしまっ
た。
やりとりを聞いていたわたしもすっかりノボセてきたので、あがることにした。
スノコのうえで浴衣を羽織ったところで、女性更衣室の扉があき、バスタオルを
巻いた彼女が眩しく登場した。
川のせせらぎも鳥の泣き声もひとの声も一瞬消えた。なんとなく、そんな気が
した。
秘すれば花、という。これは正真正銘の真実だ。と思う。
カノジョは、タオルから覗ける艶のある胸元やら、内側から輝くような剥き出し
の太腿やらに男たちのレーザーチラチラ視線を吸収しながら、わたしの横を足早に
通り、彼氏のほうにいそいそと向かっていく。
ストップモーション状態のわたしも我に返り、乾いた眼に一回瞬きをくれると、
丹前を着て帯をしめた。
(次回は食事の話)
→大沢温泉 岩手・花巻②はこちら
→大沢温泉 岩手・花巻④はこちら
③温泉
自炊部棟の客がはいれる温泉は四つである。
日帰り入浴客もたぶん同じで、料金は現在500円である。四つはいれるから安
い。
山水閣の豊沢の湯、自炊棟の奥にある混浴露天の大沢の湯、同じく自炊棟の薬師
の湯、別館菊水館の南部の湯。あとひとつの山水閣の内湯はそこに宿泊したひとだ
けだ。さらに山水閣には、貸切露天風呂もあるらしい。
泉質は硫化水素を含むアルカリ性単純泉。効能は神経痛、リウマチ、関節痛、筋
肉痛、腰痛、婦人病、胃腸病、糖尿病、冷え性、病後回復などであり、あの高村
光太郎も湯治に訪れ「ここは本当の温泉の味がする」と記したそうだ。
このうち豊沢の湯と薬師の湯は前回花巻温泉郷に来たときにはいっている。たし
かそのときは「豊沢の湯」の川に面したガラス戸はすべて外されていたから夏だっ
たのだろう。
(豊沢の湯)
川向こうの菊水館の檜の内風呂にとりあえず行ってみる。
渓流にかけられた橋を歩いていたら左手に混浴露天風呂が丸見えで、若い男性数
名のなかに、若い女性が一名いてびっくり。連れの男性のほうに身を寄せているの
だが、肌の白さに眼が眩む。
(南部の湯)
南部の湯は四、五人ぐらいが適当な浴槽である。先客は二人だった。かけ湯を
たっぷりすると浴槽にゆっくり沈めた。檜の香りが温泉の匂いを引き立て、その
二つが微妙に混ざって、なんともいえない満足感が鼻から身体の隅々に広がって
いく。硫化水素の匂いはさほどしなかった。
帰りに橋をゆっくり渡りながらふたたび眼を楽しませ・・・じゃなかった眩ませ
ながら部屋に戻った。
六時半過ぎ、新館の豊沢の湯に行き軽く浴びると、そのまま自炊棟奥のレイの
混浴露天風呂へ向かう。
露天風呂に面したところに簡易な更衣棚が壁にあった。女性には更衣室が別に
ある。
思ったより広く深い。二、三十人はまずだいじょうぶであろう。川に近いへりの
ほうに進むと、ところどころ熱い源泉の流れが脚に当たる。残念というか幸いと
いうか男ばっかりである。へりにたどり着いたところで、温泉をゆっくり楽しむ。
(大沢の湯)
二月に突然水が溜まって激痛を起こした右膝を伸ばしたり縮めたり、長年の頚椎
の爆弾をなだめるために肩を支点に腕をゆっくり回したりする。そうそう、わたし
は湯治がそもそもの目的なのだ。
「やだあ! ここ混浴なのぉ?!」
男ばかりだったので安心してくつろぎきっていると、女性混じりの四、五人の
若者連れがやってきてもめた。入浴中の男連中もさりげなく脚を組んだり、タオル
を岩にのせていたものはタオルをとり、微妙に向きを変えた。
「恥ずかしいし、どうしよう」
「水着でも持ってきてれば、な」
女は入りたい、連れのカレシと思われる男はなんとかやめさせたい。このカレシ
の気持ち、わたしにはよくわかる。わたしだったら絶対あきらめさせるところだ。
連れの他の男たちは自分の彼女でもなく気楽なものだから「バスタオルでも巻い
て入ればいいじゃん」という。
「そう・・・そうね。そうするわ」
そう言うと、カレシの反対する言葉が出る前に彼女は更衣室にはいってしまっ
た。
やりとりを聞いていたわたしもすっかりノボセてきたので、あがることにした。
スノコのうえで浴衣を羽織ったところで、女性更衣室の扉があき、バスタオルを
巻いた彼女が眩しく登場した。
川のせせらぎも鳥の泣き声もひとの声も一瞬消えた。なんとなく、そんな気が
した。
秘すれば花、という。これは正真正銘の真実だ。と思う。
カノジョは、タオルから覗ける艶のある胸元やら、内側から輝くような剥き出し
の太腿やらに男たちのレーザーチラチラ視線を吸収しながら、わたしの横を足早に
通り、彼氏のほうにいそいそと向かっていく。
ストップモーション状態のわたしも我に返り、乾いた眼に一回瞬きをくれると、
丹前を着て帯をしめた。
(次回は食事の話)
→大沢温泉 岩手・花巻②はこちら
→大沢温泉 岩手・花巻④はこちら
食べ物の話以外でもこういう話には食いつくんですね。
(しっかしまあ・・・ちょっとお下品で削除したくなるコメントって感じかなあ、なんか)
「めし」の話は次回、水曜(もしかしたら木曜)アップ予定です。
連休は渋滞と馬鹿高い宿賃を嫌って、おとなしくしています。
すっかり、「若い女(おなご)の汁の素」を、身体中に吸収されてお帰りになられましたね!
「この、エロオヤジ!」
と叫びたいのは、やはり羨ましいからでしょう。
「めし」はどうだったんですか?
部屋の模様からすると、あまり期待できないような・・・。
今日は、連休最初の中日(「ちゅうにち」じゃないよ、「まかび」)。
温泉さんは、今、何処に???