<素ラーメン>
「今日はこれからどちらまで行かれます?」
朝食のとき係りの仲居さんに訊かれた。昨日着いた時に、横浜からの旅で、この宿は二度目だとはなしてあった。
「鳥取へ行きます」
「えっ、山陰の、鳥取・・・ですか。それはまた遠い・・・」
山陽の湯田温泉にいるわけだから、広島とか岡山あたりの順当な答えがかえってくると思っていたのだろう。
出発してすぐのところで信号待ちしていると、宿のご主人と仲居さんが二人で信号が変わるまでバックミラーのなかできっちり見送ってくれていて、まことに頭がさがる。
さて鳥取だが、予定では渋滞がなければ所要時間は五、六時間だ。いまが九時だから午後二時か三時までには到着するだろう。
かなり遅めの昼メシになるが、なにを食べるかは決めてある。鳥取名物、素ラーメンだ。
思った通り、午後二時に鳥取市役所の駐車場へ到着。

省エネで暗い庁舎に入り、二階の食堂へ急ぐ。午後四時まで営業していることは調べてあるので急がなくてもいいのだが、腹ペコなのだ。走行距離が約四百キロ、高速がない区間もあってたっぷり走りでがあった。

食堂にはさすがに客がいないし、厨房もきれいに清掃をすませてある。
券売機で「スラーメン」を探しだし、硬貨を投入する。安い、二百五十円也。サイドメニューでおにぎりか、お稲荷さんが欲しいところだが無いようなのであきらめる。


食券を厨房に出して、そばにあったコンビニのような店を物色する。おこわご飯があったが、わたしの欲しいのはやっぱりない。
厨房から声がかかり、素ラーメンの丼を受取ってガラガラのテーブル席に座る。

モヤシと蒲鉾と葱が具のなんともシンプルな景色だが、腹がへっているので旨そうだ。
まずはスープ、カツオと昆布のすっきりした和風の、うどんだしの味だ。色はついていないが、薄口醤油がきいていて甘みはかすかである。たしかスープには天かすがはいっているはずなのだがその気配はない。天かすなしのこのままでもわたしには充分いける味だ。

麺の量は思ったより多く、縮れているのでスープがよく絡んでとても食べやすく美味しい。

血圧が若干高いのでラーメンのスープは必ず残すのだが、この素ラーメンは飲みきってしまった。この味は、子どもから老人まで幅広く受け入れられる一品だ。
スープにこくがでるという「天かす」のことだが、どうやらセルフで好きなだけ投入できたようである。空腹で余裕がなくなっていたのでまったく気が付かなかった。天かす好きだから、ぜひとも次の機会にたっぷり入れて食べたい。
ふと、それって、尾道の天ぷら中華に近い味にきっとなるのだろうなあと思う。
鳥取到着がもしも午後四時を廻ってしまったら、A案の市役所をあきらめ、B案である武蔵屋食堂へ行こうと思っていた。ただし値段がちょいと高く、倍近い。
武蔵屋食堂ではいまから六十年以上前、1946年から素ラーメンをメニューにしているというから、きっとこちらの店が発祥なのだろう。
とにもかくにも素ラーメン、完食である。
かなり長い間コイツを食べてみたかったのだが、さすがに「素ラーメンが目的」の旅は寂しくてできなかった。
今回、三朝温泉に初宿泊するのでやっと食べられたのだ。
安いし、もう一杯食べちゃうかとチラリとしかし強く思ったが、今日の宿は二食付きだったことを思いだし、溜息をそっと洩らし空の丼を厨房へいそいそと運ぶのだった。

→「湯田温泉」の記事はこちら
→「続・尾道ラーメン」の記事はこちら
「今日はこれからどちらまで行かれます?」
朝食のとき係りの仲居さんに訊かれた。昨日着いた時に、横浜からの旅で、この宿は二度目だとはなしてあった。
「鳥取へ行きます」
「えっ、山陰の、鳥取・・・ですか。それはまた遠い・・・」
山陽の湯田温泉にいるわけだから、広島とか岡山あたりの順当な答えがかえってくると思っていたのだろう。
出発してすぐのところで信号待ちしていると、宿のご主人と仲居さんが二人で信号が変わるまでバックミラーのなかできっちり見送ってくれていて、まことに頭がさがる。
さて鳥取だが、予定では渋滞がなければ所要時間は五、六時間だ。いまが九時だから午後二時か三時までには到着するだろう。
かなり遅めの昼メシになるが、なにを食べるかは決めてある。鳥取名物、素ラーメンだ。
思った通り、午後二時に鳥取市役所の駐車場へ到着。

省エネで暗い庁舎に入り、二階の食堂へ急ぐ。午後四時まで営業していることは調べてあるので急がなくてもいいのだが、腹ペコなのだ。走行距離が約四百キロ、高速がない区間もあってたっぷり走りでがあった。

食堂にはさすがに客がいないし、厨房もきれいに清掃をすませてある。
券売機で「スラーメン」を探しだし、硬貨を投入する。安い、二百五十円也。サイドメニューでおにぎりか、お稲荷さんが欲しいところだが無いようなのであきらめる。


食券を厨房に出して、そばにあったコンビニのような店を物色する。おこわご飯があったが、わたしの欲しいのはやっぱりない。
厨房から声がかかり、素ラーメンの丼を受取ってガラガラのテーブル席に座る。

モヤシと蒲鉾と葱が具のなんともシンプルな景色だが、腹がへっているので旨そうだ。
まずはスープ、カツオと昆布のすっきりした和風の、うどんだしの味だ。色はついていないが、薄口醤油がきいていて甘みはかすかである。たしかスープには天かすがはいっているはずなのだがその気配はない。天かすなしのこのままでもわたしには充分いける味だ。

麺の量は思ったより多く、縮れているのでスープがよく絡んでとても食べやすく美味しい。

血圧が若干高いのでラーメンのスープは必ず残すのだが、この素ラーメンは飲みきってしまった。この味は、子どもから老人まで幅広く受け入れられる一品だ。
スープにこくがでるという「天かす」のことだが、どうやらセルフで好きなだけ投入できたようである。空腹で余裕がなくなっていたのでまったく気が付かなかった。天かす好きだから、ぜひとも次の機会にたっぷり入れて食べたい。
ふと、それって、尾道の天ぷら中華に近い味にきっとなるのだろうなあと思う。
鳥取到着がもしも午後四時を廻ってしまったら、A案の市役所をあきらめ、B案である武蔵屋食堂へ行こうと思っていた。ただし値段がちょいと高く、倍近い。
武蔵屋食堂ではいまから六十年以上前、1946年から素ラーメンをメニューにしているというから、きっとこちらの店が発祥なのだろう。
とにもかくにも素ラーメン、完食である。
かなり長い間コイツを食べてみたかったのだが、さすがに「素ラーメンが目的」の旅は寂しくてできなかった。
今回、三朝温泉に初宿泊するのでやっと食べられたのだ。
安いし、もう一杯食べちゃうかとチラリとしかし強く思ったが、今日の宿は二食付きだったことを思いだし、溜息をそっと洩らし空の丼を厨房へいそいそと運ぶのだった。

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