温泉クンの旅日記

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岐阜、金華山へ

2020-08-23 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <岐阜、金華山へ>

 昭和41年(1966年)に発売され、美川憲一の大ヒット曲となった「柳ケ瀬ブルース」で知られる岐阜の歓楽街、「柳ケ瀬」である。

 

 コロナ禍で、普段なら繁華なアーケード街にもまったくひと気はなく寂しい。
(柳ケ瀬か、懐かしいな・・・)

 
 
 サラリーマンのまだ駆けだしのころ、生まれて初めての出張が名古屋と岐阜の一泊二日だった。といっても上司の視察に随行する鞄持ちといった体(てい)である。本部長との出張だったため、宿泊は、当時ハイクラスのシティホテル「名古屋観光ホテル」だった。
 名古屋支店の連中と女子大小路で二軒飲み歩き、部屋に戻ると、電話でホテルお勧めのマッサージを頼むことにした。接待で自分の金を使わなかったのでちょっとだけ贅沢しようと思ったのである。安心できる名門ホテルだし料金も安かった。記憶ではたしか三千五百円くらいだった。

 ノックがあって開けると、淡く期待した女性ではもちろんなく、人の良さそうなオジサンだった。早速ベッドにうつ伏せになって施術にとりかかる。魔法のような手の動きで、肩から首、背中から腰の雁字搦めになった筋がみるみるほどけて楽になっていく・・・。
 身体の右半分が極楽状態になったところで、耳元に「お時間になりました」と声がかかって魔法の手の動きがピタリと止まった。そんなあー、勘弁してよ。右は極楽で、コリ固まった左半分地獄はどうしてくれるの。
「もうワンセットいきますか?」
 倍の料金になるとわかっているけど、「お願いします」って言う選択肢しか悔しいが考えられなかったのである。

 朝食から岐阜への移動まで、どうにも忸怩たる思いがあり、昨夜の失敗談は封印し続けた。
 だが岐阜オフィスに近いこの柳ケ瀬で、ふと待てよ・・・もしかしてお馬鹿な出張客目当てのホテルぐるみの罠じゃなかったのかと思ったらやおら怒髪天を衝く興奮状態になり、出張先に到着寸前、ついに白状してしまったのだ。
 親子ほど年が違う上司は、口辺に笑みを浮かべて聞いていたがついに堪え切れなくなって笑いだし、やがてぼそりと呟いた。「笑ってすまん。ジツはね、ボクもなんだよ」。この時から、世代間の垣根がとれて仲良くなったのはいうまでもない。

 

 金華山山麓にある岐阜公園には、かつて城主であった斎藤道三や織田信長の居館があった。
 広い園内には日本庭園などもあり、なぜか喫煙所もかなり設置してあり、喫煙者に配慮してくれていてありがたい。

 

 

 金華山(旧名稲葉山)は岐阜のシンボルである。頂上の要害に建つ「稲葉山城」は美濃を支配する斎藤道三の居城であった。

 

 標高329メートルで、初心者でも登れるものから健脚者向けまで、登山道が十余りもあるが、この時期には熱中症が心配である。ロープウェーは岐阜公園と金華山山頂駅をたったの3分で結ぶので無難で最善の選択肢だ。
 乗っているのが3分なら、高所恐怖症のわたしでもだいじょうぶそうだ。

 

 山麓に建つ朱色の真新しい三重塔は、大正天皇の即位を祝って岐阜市民の寄付で大正六年に建立されたそうだ。
 長良川がうねうねと流れている。たしか長良川の戦いで信長の義父斎藤道三が息子義龍に討ち取られた。

 
 
 小椎(ツブラジイ)、アラカシを主とした照葉樹林で覆われている。金華山の山名だが、ツブラジイの花が咲くと山全体が黄色く見え金色に輝いてみえることに由来するともいわれている。

 

 山頂駅から城まで“徒歩で8分”といかにも楽そうだが、猛暑日の登り下りはかなり厳しいものがあった。平地で健脚でも山道は別物、かなりしんどい。

 

 山頂の岩山に聳える「稲葉山城」は難攻不落の城として知られるが、織田信長がこの城を攻略して城主となり、地名を「岐阜」に、「稲葉山城」を「岐阜城」に改めた。

 

 城の入口で、検温やら氏名とか連絡先を訊かれているのをみて、模擬天守だし面倒くさいやとあっさりわたしは見学をパスした。
 眼下に見下ろす岐阜の眺めは壮観で、一見の価値がある。

 

 夜になれば眼下に岐阜の繁華街の煌めく灯が、遠くに名古屋市の輝きが広がり、函館に負けない夜景が見られるそうだ。たしかに標高は函館山(334メートル)と変わらないが、函館に負けない夜景は言い過ぎだろう。

「お城までは(歩いて)すぐですかね」
 山頂駅に近い休憩所まで戻ってくると、冷たいものを飲みながら年配のおっさんが汗まみれのわたしに声をかけてきた。
「いやぁー、城までは、けっこうな距離ありますよ」
 それに、登りだけでなく下りの山道もきついぜよ。

 

 だからさ、猛暑だし、よっぽどの城マニアでなければやめておいたほうがいいよ、と聞こえぬように呟いたのだった。



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