温泉クンの旅日記

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続・養老牛温泉(4) 道東・中標津町

2020-08-30 | 温泉エッセイ
  <続・養老牛温泉(4) 道東・中標津町>

「養老牛」の地名由来はいくつかあって、一説によるとアイヌ語の「エヨロシ」または「エ・オルシ」に由来し、山が岩崖になって氷の中にささりこむようになっているところを意味すると言う。いずれにしてもアイヌ語からきているのは間違いない。温泉の発見は約三百年前とされアイヌの人々が利用していたそうだから。

 

 

 國稀が入った重い巾着袋を抱き、半乾きのタオルをクルクル回しながら無音で歩み、大浴場に寄り道する。宿泊客がまだ食事中のうちに、いつものようにわたしは、早めに切り上げてガラガラの時間帯を狙うのである。

 

 ゆっくり掛け湯を使い、唸り声みたいな満足のため息をつきながら浴槽に身体を沈めていく。
(北海道の宿なのに、なぜか九州を感じるなあ・・・)
 どこか黒川温泉とか由布院に似た雰囲気がある。北海道の冬は長く過酷なので、どうしても宿の建物は味気ないかっちりしたコンクリート造りが多い。

 

 

 ここは違う。浴場や宿の随所に木の温もりや自然光を活かしている。宿で働いている人に元気な若者が多いところも由布院みたいだ。
 現在の宿の主人は全国の温泉宿を巡ったと、朝食時に隣席から聞こえてきた女将と常連客の会話で知って、なるほどと納得したのだった。
 
 ズッシーン! びりびりと家鳴りがする地響きが寝床を揺らす。
 地震か――。朝湯をゆっくり浴びて戻り、いつものように二度寝を決めこんでいたわたしは驚いて飛び起きる。地響きは一定間隔で、掛け声がかすかに聞こえてくる。
(そうか、そういえば朝に餅つきをやるって言っていたな・・・)
 まさか、山形の赤湯温泉の宿を真似したのかと勘ぐってしまう。

 

 

 ずらりと並んだ朝食の料理に目移りしていた。

 

 冷えた牛乳に眼がとまる。旨そうな牛乳だな・・・。でも腹が心配だ。
 ぜひぜひお試しくださいな、低温殺菌なのでお腹にも優しい美味しい牛乳ですよ、とわたしの思いを完全に読み切られたようだ。放牧されている牛に話しかけたし、飲むとするか。

 

「養老牛 放牧牛乳(シマフクロウの棲む森のミルク)」。

  

 搾乳牛には配合飼料を使用せず、摩周湖水系の水を飲ませ、農薬を使わない牧草をたっぷり食べさせて一年中放し飼いだそうだ。
 おほっ! 牛乳の表面に「天使の分け前」と呼ぶ生クリームの層が浮かんでいて驚いた。ひと口目が濃厚レアチーズケーキかプリン、みたい。
 賞味期限日に近くなると、生クリームの層をパンに塗って楽しめるという。製造日の翌日から三日目までの生きのいい新鮮そのものの牛乳である。
 久しぶりの牛乳は感動的に旨かった。

 

 バイキングは、いつものように残さない程度の軽めの量でスタート。食べきったら、次の目当ての料理ももちろん考慮済である。搗きたての餅も。

「あ! リスだ」

 

 いままで小鳥しかみたことなかったが、食事後、窓際で珈琲を飲んでいたら運よく可愛いリスがみられた。
「シマフクロウと会える秘湯」という売り文句で有名な養老牛温泉には三つの宿があったが、2014年に「旅館藤や」、2019年に「ホテル養老牛」と二軒が廃業し現在はここ一軒のみとなっている。
 わたしの目当ては二度とも温泉で稀少なシマフクロウではない。売り文句に拘らず、いまの宿の居心地を維持していけばリピーターは確実に増えていくと思う。



  →「続・養老牛温泉(1) 道東・中標津町」の記事はこちら
  →「続・養老牛温泉(2) 道東・中標津町」の記事はこちら
  →「続・養老牛温泉(3) 道東・中標津町」の記事はこちら
  →「赤湯温泉(1)」の記事はこちら
  →「赤湯温泉(2)」の記事はこちら
  →「赤湯温泉(3)」の記事はこちら




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