<読んだ本 2017年2月>
2月は「掟破り」を二つしてしまった。
約一カ月の禁酒期間を除いたら一年三百と三十五日、不断の酩酊状態なわけであるから、禁酒中は不眠やらなにやら本人にすればだが筆舌にしがたいほど辛い。
1月に「ジャック・リーチャ―」、「ドント・ブリーズ」と目ぼしい洋画を観てしまったので、2月に邦画「君の名は。」をこっそり観てしまった。去年の6月から封切られたのに、劇場はそれなりの入りであるのに驚く。聞くところによると、何度も観る客が多いそうだ。
古来、中国では人生を四つの季節「青春・朱夏・白秋・玄冬」に例えるというが、この映画にハマる人たちはたぶん青春か朱夏の季節なんだろう。
すれっからしのわたしには、どうしてヒットしたのかよく解らない映画だった。ただ印象に残ったシーンはある。
襖だったり引き戸だったりの、敷居の端の一番下くらいからのアングルで向こうから手前に襖や引き戸が勢いよく締まるシーン。まるで線路に寝ている虫の自分が轟音をあげた機関車が突進してきて一瞬にして轢きつぶされるようなシーンである。
もうひとつの掟破り。
「ストーンアイスパフェ、絶対食べてみて! マジ超絶オイシイから!」
ガストで珈琲を飲みながら本を読んでいると、女性たちの会話が耳に入ってきた。
ふーん、ストーンアイスパフェ・・・か。昼食を食べた女性陣が引きあげたので、思い切って頼んでみた。禁酒中だから冒険もたまにしないと。
「グチャグチャに掻き混ぜてからお召あがりください」
運んできた店員が不敵な笑みをたたえながら言った。
原型がなくなるまで掻き混ぜると、なにやらユニセフのコマーシャルで可哀相な子ども・・・あばら骨が浮いた目玉の大きい幼児がスプーンで食べさせられている食糧みたいになってしまった。
恐る恐る食べたら・・・冷たいアイスの甘みと新鮮なイチゴの甘みと酸味が混然一体となって、砕けたビスケットがカリッとした香ばしい風味がアクセントとして加わり、得も言えぬ味わいの妙である。たしかにのけ反るほど「超絶オイシイ」シロモノだった。
まったく「口コミ」というヤツは信じてみるものだと感心した。
さて、2月に読んだ本ですが今月も8冊、年間累計で16冊でした。
1. ○更衣ノ鷹(上) 居眠り磐音 江戸双紙三十一 佐伯泰英 双葉文庫
2. ○更衣ノ鷹(下) 居眠り磐音 江戸双紙三十二 佐伯泰英 双葉文庫
3.○孤愁ノ春 居眠り磐音 江戸双紙三十三 佐伯泰英 双葉文庫
4. ○ネバー・ゴー・バック (上) リー・チャイルド 講談社文庫
5. ○ネバー・ゴー・バック (下) リー・チャイルド 講談社文庫
6. ◎青春の門 第一部 筑豊篇 五木寛之 講談社文庫
7. ○鴨川食堂 柏井壽 小学館文庫
8. ○鴨川食堂 おかわり 2 柏井壽 小学館文庫
五木寛之が、1969年から書き始めた「青春の門」の続編を今年からまた始めると聞いた。とんでもない昔に読んだはずだが、この機会にまた八巻すべて読みなおそうと思う。
「ネバー・ゴー・バック」ですが、本でなく映画を観た方がよろしいかと。
ジャック・リーチャ―はなんとなく自分に似ていると思う。と言うと「エェ~ッ、お宅、そんな格好良かったっけ!」と苦情殺到で炎上しそうだが、一点だけだ。
着るものに無頓着なところである。荷物も持たずに旅するリーチャ―は、二週間着ると安い既製品を買い、着古したものをゴミ箱に捨てる。わたしも同じように着道楽ではないのである。
『しかし、リーチャ―は腹が減ってもかまわなかった。空腹は感覚を研ぎすます。脳の創造性を刺激する。
そう信じていた。進化論的な遺産だ。腹が減ったら、つぎのマンモスをしとめる賢い方法を思いつく。
あすにではなく、きょうに。』
「“食”探します」という雑誌の一行広告のみ、看板もない「鴨川食堂・鴨川探偵事務所」。京都の東本願寺近くにひっそり存在する店だが、縁あって辿りついた客はもう一度食べてみたいものに出会える。
『人とのご縁は言うのは不思議なもんでしてな、出会うべき人には必ず出会うもんなんです。』
わたしも、心底そう思う。この「縁」というものに相当に深い思い入れがある。
『「お口に合いますかいな」
冷茶。の入ったガラスポットを持って、流が恭介の傍に立った。
「どう言うてええか、言葉を知らんのですけど。美味しいことは間違いないです。僕みたいな
味音痴でもそれだけは分かります」
「何よりです。わしら料理人は一回勝負ですさかいに。食べてもろてお気に召さなんだら、
次はありませんのや。気に入ってもろたら、二回戦もありますけどな』
飲食店はたしかに「一回勝負」だ。味でも、接客でもだ。
→「読んだ本 2017年1月」の記事はこちら
2月は「掟破り」を二つしてしまった。
約一カ月の禁酒期間を除いたら一年三百と三十五日、不断の酩酊状態なわけであるから、禁酒中は不眠やらなにやら本人にすればだが筆舌にしがたいほど辛い。
1月に「ジャック・リーチャ―」、「ドント・ブリーズ」と目ぼしい洋画を観てしまったので、2月に邦画「君の名は。」をこっそり観てしまった。去年の6月から封切られたのに、劇場はそれなりの入りであるのに驚く。聞くところによると、何度も観る客が多いそうだ。
古来、中国では人生を四つの季節「青春・朱夏・白秋・玄冬」に例えるというが、この映画にハマる人たちはたぶん青春か朱夏の季節なんだろう。
すれっからしのわたしには、どうしてヒットしたのかよく解らない映画だった。ただ印象に残ったシーンはある。
襖だったり引き戸だったりの、敷居の端の一番下くらいからのアングルで向こうから手前に襖や引き戸が勢いよく締まるシーン。まるで線路に寝ている虫の自分が轟音をあげた機関車が突進してきて一瞬にして轢きつぶされるようなシーンである。
もうひとつの掟破り。
「ストーンアイスパフェ、絶対食べてみて! マジ超絶オイシイから!」
ガストで珈琲を飲みながら本を読んでいると、女性たちの会話が耳に入ってきた。
ふーん、ストーンアイスパフェ・・・か。昼食を食べた女性陣が引きあげたので、思い切って頼んでみた。禁酒中だから冒険もたまにしないと。
「グチャグチャに掻き混ぜてからお召あがりください」
運んできた店員が不敵な笑みをたたえながら言った。
原型がなくなるまで掻き混ぜると、なにやらユニセフのコマーシャルで可哀相な子ども・・・あばら骨が浮いた目玉の大きい幼児がスプーンで食べさせられている食糧みたいになってしまった。
恐る恐る食べたら・・・冷たいアイスの甘みと新鮮なイチゴの甘みと酸味が混然一体となって、砕けたビスケットがカリッとした香ばしい風味がアクセントとして加わり、得も言えぬ味わいの妙である。たしかにのけ反るほど「超絶オイシイ」シロモノだった。
まったく「口コミ」というヤツは信じてみるものだと感心した。
さて、2月に読んだ本ですが今月も8冊、年間累計で16冊でした。
1. ○更衣ノ鷹(上) 居眠り磐音 江戸双紙三十一 佐伯泰英 双葉文庫
2. ○更衣ノ鷹(下) 居眠り磐音 江戸双紙三十二 佐伯泰英 双葉文庫
3.○孤愁ノ春 居眠り磐音 江戸双紙三十三 佐伯泰英 双葉文庫
4. ○ネバー・ゴー・バック (上) リー・チャイルド 講談社文庫
5. ○ネバー・ゴー・バック (下) リー・チャイルド 講談社文庫
6. ◎青春の門 第一部 筑豊篇 五木寛之 講談社文庫
7. ○鴨川食堂 柏井壽 小学館文庫
8. ○鴨川食堂 おかわり 2 柏井壽 小学館文庫
五木寛之が、1969年から書き始めた「青春の門」の続編を今年からまた始めると聞いた。とんでもない昔に読んだはずだが、この機会にまた八巻すべて読みなおそうと思う。
「ネバー・ゴー・バック」ですが、本でなく映画を観た方がよろしいかと。
ジャック・リーチャ―はなんとなく自分に似ていると思う。と言うと「エェ~ッ、お宅、そんな格好良かったっけ!」と苦情殺到で炎上しそうだが、一点だけだ。
着るものに無頓着なところである。荷物も持たずに旅するリーチャ―は、二週間着ると安い既製品を買い、着古したものをゴミ箱に捨てる。わたしも同じように着道楽ではないのである。
『しかし、リーチャ―は腹が減ってもかまわなかった。空腹は感覚を研ぎすます。脳の創造性を刺激する。
そう信じていた。進化論的な遺産だ。腹が減ったら、つぎのマンモスをしとめる賢い方法を思いつく。
あすにではなく、きょうに。』
「“食”探します」という雑誌の一行広告のみ、看板もない「鴨川食堂・鴨川探偵事務所」。京都の東本願寺近くにひっそり存在する店だが、縁あって辿りついた客はもう一度食べてみたいものに出会える。
『人とのご縁は言うのは不思議なもんでしてな、出会うべき人には必ず出会うもんなんです。』
わたしも、心底そう思う。この「縁」というものに相当に深い思い入れがある。
『「お口に合いますかいな」
冷茶。の入ったガラスポットを持って、流が恭介の傍に立った。
「どう言うてええか、言葉を知らんのですけど。美味しいことは間違いないです。僕みたいな
味音痴でもそれだけは分かります」
「何よりです。わしら料理人は一回勝負ですさかいに。食べてもろてお気に召さなんだら、
次はありませんのや。気に入ってもろたら、二回戦もありますけどな』
飲食店はたしかに「一回勝負」だ。味でも、接客でもだ。
→「読んだ本 2017年1月」の記事はこちら
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