<読んだ本 2014年5月>
秋田土産の『金萬』を食べ始めたら、畳んだ羽根布団の真ん中でアンパンのへそのように沈み込んでぐっすり寝こんでいた海が眼をパッチリ開けた。
(あ、こっそりナニ食べてるニャー?)
眼で喋りやがる猫なのだ。
それにまったくもって・・・旨いものには決まって反応する猫である。ただ、薬の錠剤くらいの量をあげれば、満足するのだ。「わーったわかった、ちょっとだけあげるって」。
秋田旅から帰って、次の土曜日に根津神社に行った。
目当ての躑躅はやはり完全に終わっていたが本堂脇に、なかなかの雰囲気の、塀のある路地をみつけて満足した。
その翌日のBS時代劇「藤枝梅安」で、この場所が使われて吃驚した。ロケハンしたひとはわたしと似たような感覚なのだろう。
鐘ヶ淵に行くのに、ひと駅前の東向島駅で降りた。
まずは軽く昼を食べてからと決めて店探しをすると、店の前の看板に「もやしそば四百五十円」とあったのにすぐにパクリと喰いついてしまう。ワンコインはとにかく理屈抜きにありがたい。
シャキシャキのもやしに胡椒の利いたスープで美味しい。それに冷えた杏仁豆腐も付いている。
小腹を満たすと、歩きだす。
鐘ヶ淵駅の脇を通り墨堤通りに出て北上する。
鐘ヶ淵といえば「剣客商売」の小兵衛とおはるの住まいがあるところである。いつかは行ってみたいと思っていたのである。
『六十八間余の大川をわたって対岸の寺島村へ着くと、田圃道の向こうに堤が横たわり、
ものの本に、
「官府の命ありて、堤の左右へ桃・桜・柳の三樹を植させられければ、二月の末より弥生の末まで、
紅紫翠白枝をまじえ、さながら錦繍をさらすがごとく、幽艶賞するに堪えたり」
とあるような景観が展開し、あたりには木母寺・梅若塚・白髭明神などの名所旧跡が点在して、
四季それぞれの風趣はすばらしく、秋山小兵衛がこのあたりに住みついてから、もう六年になる。』
現在の綾瀬橋があるあたりがどうやらその場所にあたる。
高速道路が頭上を走って、いまやその面影はまったくなかった。
『「あるとき、豁然として女体を好むようになって、な。お前が旅に出たのち、四谷の道場を
たたんで剣術をやめてことは、やはりよかった」』
池波正太郎著「剣客商売」新潮文庫 より
無外流の達人秋山小兵衛は息子大治朗にそういって、四十も年下の若い女房のおはると二人鐘ヶ淵に住むのだった。
さて、今月に読んだ本ですが、5月も先月に引き続きまあまあの8冊、累計で36冊です。
1.○ええもんひとつ とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
2.○赤絵そうめん とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
3. ○冬日淡々 酔いどれ小藤次十四 佐伯泰英 幻冬舎文庫
4. ○新春歌会 酔いどれ小藤次十五 佐伯泰英 幻冬舎文庫
5. ○旧主再会 酔いどれ小藤次十六 佐伯泰英 幻冬舎文庫
6. ○スリーパー 楡周平 KADOKAWA
7. ○祝言日和 酔いどれ小藤次十七 佐伯泰英 幻冬舎文庫
8.○鮫島の貌 新宿鮫短編集 大沢在昌 光文社
今月は眼を釘づけにされた文章もなく、◎印もなかった寂しい一カ月でした。
ただ、「とびきり屋見立て帖」は先月からの三作合わせて「◎」印を付けてもいい。
「スリーパー」は期待した分、逆に「△」に近かった。
「鮫島の貌」を読んで、しばらく「新宿鮫」シリーズを読んでいなかったことに気づき、来月から新作から遡って読むことに決めました。
→「読んだ本 2014年4月」の記事はこちら
秋田土産の『金萬』を食べ始めたら、畳んだ羽根布団の真ん中でアンパンのへそのように沈み込んでぐっすり寝こんでいた海が眼をパッチリ開けた。
(あ、こっそりナニ食べてるニャー?)
眼で喋りやがる猫なのだ。
それにまったくもって・・・旨いものには決まって反応する猫である。ただ、薬の錠剤くらいの量をあげれば、満足するのだ。「わーったわかった、ちょっとだけあげるって」。
秋田旅から帰って、次の土曜日に根津神社に行った。
目当ての躑躅はやはり完全に終わっていたが本堂脇に、なかなかの雰囲気の、塀のある路地をみつけて満足した。
その翌日のBS時代劇「藤枝梅安」で、この場所が使われて吃驚した。ロケハンしたひとはわたしと似たような感覚なのだろう。
鐘ヶ淵に行くのに、ひと駅前の東向島駅で降りた。
まずは軽く昼を食べてからと決めて店探しをすると、店の前の看板に「もやしそば四百五十円」とあったのにすぐにパクリと喰いついてしまう。ワンコインはとにかく理屈抜きにありがたい。
シャキシャキのもやしに胡椒の利いたスープで美味しい。それに冷えた杏仁豆腐も付いている。
小腹を満たすと、歩きだす。
鐘ヶ淵駅の脇を通り墨堤通りに出て北上する。
鐘ヶ淵といえば「剣客商売」の小兵衛とおはるの住まいがあるところである。いつかは行ってみたいと思っていたのである。
『六十八間余の大川をわたって対岸の寺島村へ着くと、田圃道の向こうに堤が横たわり、
ものの本に、
「官府の命ありて、堤の左右へ桃・桜・柳の三樹を植させられければ、二月の末より弥生の末まで、
紅紫翠白枝をまじえ、さながら錦繍をさらすがごとく、幽艶賞するに堪えたり」
とあるような景観が展開し、あたりには木母寺・梅若塚・白髭明神などの名所旧跡が点在して、
四季それぞれの風趣はすばらしく、秋山小兵衛がこのあたりに住みついてから、もう六年になる。』
現在の綾瀬橋があるあたりがどうやらその場所にあたる。
高速道路が頭上を走って、いまやその面影はまったくなかった。
『「あるとき、豁然として女体を好むようになって、な。お前が旅に出たのち、四谷の道場を
たたんで剣術をやめてことは、やはりよかった」』
池波正太郎著「剣客商売」新潮文庫 より
無外流の達人秋山小兵衛は息子大治朗にそういって、四十も年下の若い女房のおはると二人鐘ヶ淵に住むのだった。
さて、今月に読んだ本ですが、5月も先月に引き続きまあまあの8冊、累計で36冊です。
1.○ええもんひとつ とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
2.○赤絵そうめん とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
3. ○冬日淡々 酔いどれ小藤次十四 佐伯泰英 幻冬舎文庫
4. ○新春歌会 酔いどれ小藤次十五 佐伯泰英 幻冬舎文庫
5. ○旧主再会 酔いどれ小藤次十六 佐伯泰英 幻冬舎文庫
6. ○スリーパー 楡周平 KADOKAWA
7. ○祝言日和 酔いどれ小藤次十七 佐伯泰英 幻冬舎文庫
8.○鮫島の貌 新宿鮫短編集 大沢在昌 光文社
今月は眼を釘づけにされた文章もなく、◎印もなかった寂しい一カ月でした。
ただ、「とびきり屋見立て帖」は先月からの三作合わせて「◎」印を付けてもいい。
「スリーパー」は期待した分、逆に「△」に近かった。
「鮫島の貌」を読んで、しばらく「新宿鮫」シリーズを読んでいなかったことに気づき、来月から新作から遡って読むことに決めました。
→「読んだ本 2014年4月」の記事はこちら
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