温泉クンの旅日記

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南紀白浜温泉、美し宿(1)

2022-03-06 | 温泉エッセイ
  <南紀白浜温泉、美し宿(1)>

(ふぅ・・・やっと、なんとか入れそうな温度になったぞ!)
 掛け湯を足先に少しだけした瞬間、激アツの湯で、これは軽く五十度を超えているなと感じ、ホースから盛大に水を注ぎ入れ続けたのであった。
 熊本の杖立温泉で痛い目にあっていらい、掛け湯の大切さが身にしみているのである。

 

 浴槽の、水道からのホースを突っ込んだあたりから慎重に足から入り、そろそろと身体を沈めていく。
 熱い湯のなかで足を揉む。空振りだった「とれとれ市場南紀白浜」までの歩きが応えたかな。
 温泉は、たっぷりの解放感やら滅多に味わえない種類の安らぎを惜しみなく与えてくれる。そして、薄い硫黄に混じってだが、活きのいい湯からは希望の匂いも確かに感じられるのだ。
 この露天は星空を見上げることができ、流れ星が見えると評判が良いという。

 旅費のなかの宿賃は、計算しやすくざっと「一日一万円以内」、とざっくり決めている。
 温泉宿で二食の場合、たいていその額では間に合わない。だから、その日以外の宿賃を減らして間に合わせるのである。
 高値当たり前の白浜温泉のなか「花飾璃(はなかざり)」は、税込で一万円ぴったりと嬉しい宿賃でまさしくダボハゼのごとく喰いついてしまった。サービス料込(入湯税別)でも、一万飛んで八百円也である。

 

 

 洒落た「花飾璃」という名の由来は、三十種類のバラを中心に四季の花々を育てているから<花>、その花を「押し花」や「プリザーブドフラワー」にして、館内を飾っているので<飾>、<瑠>には「美しい宝石」や「曇りのない水晶やガラス」の意味があり、世界にひとつだけのとんぼ玉を作って簪(かんざし)、帯留め、ネックレスなどとして展示している。つまり宿のコンセプトが「四季の花を楽しんで 飾りの中で寛ぎのひと時を 瑠の心でおもてなし」だからだそうである。

 

 

 チェックイン前のいつも通りのフライングであるが、自分の予定通りの二時半過ぎに宿「花飾璃(はなかざり」に到着した。
 朝早くから気持ち良くザックを預かってくれた女将に、部屋に案内されるや、たちまち着替えると内湯をすっ飛ばして露天風呂から攻めることにしたのである。

 さて、内湯に移動するとするか。ただし、棟内の内湯へいくには、面倒だがいったん浴衣を着なければならない。

 

 露天に近いほうの内湯は狭かったので、広いほうに入り鍵を掛けた。二つある内湯、露天ともに空いていれば、鍵を掛けて貸切で自由勝手に入れるのである。
 ここでも先ずは慎重に掛け湯をしてみると、やはり激アツだったので、水道のホースを突っ込み、身体を洗って時間を潰す。外ではないので気長なもんだ。

 

 丁度いい温度になったので、浴槽に身を沈める。宿の温泉は加水・加温・循環一切無しの100%源泉掛け流し温泉である。

 温泉といえば、火山や火山帯が付きものである。ところが白浜温泉はどの火山帯にも属しておらず、火山が周辺にないのに温泉が湧き出ていることが不思議とされてきた。近年の調査で、フィリピン海から潜り込んだプレートから滲出した高温の地下水が滞留しているものであることが、核燃料サイクル開発機構より研究報告されたのである。いかめしい「核燃料サイクル開発機構」が“温泉の研究報告”とは、いかにもほど遠い調査機関であり信頼できるのが、面白い。

(白浜との遺恨試合だが、観光、温泉の部で一本とれたな・・・)
 部屋に戻り、円月島から宿までにあったコンビニで調達した酒でひと息入れる。

 夕食の時間となり、食事処がわからずフロントにいくとロビースペースに一角にわたしの席が用意されているという。

 

 

 えっ! ややや・・・これは!
 豪勢すぎて、とても宿賃がポッキリ一万円の夕食のラインナップと思えないぞ。

 

 おいおい、なんか誰かさんの献立と間違ってないかい? 
 あっらぁー、お客さん食べちゃいましたか、ではバッチリ追加料金いただきますからね。なんてことにならないだろうか。
 とりあえず、酒でも頼んで少しでも時間を稼ぐとするか。


   ― 続く ―

    →「杖立温泉」の記事はこちら
    →「南紀白浜、名所歩き倒し(1)」の記事はこちら
    →「南紀白浜、名所歩き倒し(2)」の記事はこちら


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