図書館で借りた本
読み出したら止まらない。
芥川賞受賞作にふさわしい傑作と感じました。
作中のマサキ・セトによる「ホモ・ミゼラビリス 同情されるべき人々 完全版」に寄せての序文は、考えさせられました。
「世の中には特権を持たずに生まれてくる人がたくさんいます。良いことをしても誰からも褒められず、むしろ、生まれてきたことを否定されながら大人になる人々がいるのです。そうした人たちは、報酬系と呼ばれる脳の神経ネットワークが正常に育っていない場合がほとんどです。たとえ良いおこないをしても、あなたのように正常にドーパミンが出ないので、幸福な気持ちになること自体が少ないのです。あなたとは見えてる景色、思考の前提があまりにも違いすぎる。幸福な未来を想像しようにも、そもそも幸福がどのような状態なのかがわからない。守るべき幸福がなければ、罪を犯すハードルは恐ろしいほど低くなる。他人の幸せを想像する力がなく、幸せを奪うことに対して罪の意識自体が生じにくい。つまり彼らは、犯罪者、加害者である以前に、元被害者であるケースが圧倒的に多いのです。本人が被害者であることを周りにうまく説明できなかったために、誰からのケアもサポートも受けられなかった、かわいそうな元被害者なのです。そんな彼らとあなたが、同じ世界の、同じ法律、ルールの下で、同じ人間として生きていかなければならないというのは、あまりにもアンフェアで、残酷な仕打ちではないでしょうか?」
面白い小説あるあるで、一気に読了。
おすすめの一冊。