下記の作品はシミが多く発生していたので、染み抜きして改装しています。作品そのものは以前に紹介していますので、詳細は省略しますが、平福百穂と伊藤左千夫の関係を示す貴重な作品と推定されます。
浜鳥之図 平福百穂筆 伊藤左千夫賛
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 合箱
全体サイズ:縦1480*横550 画サイズ:縦610*横420
2024年10月 締め直し改装
さて本日は平福百穂が描いた近代南画と称せられる作品群の画風の作品を紹介します。
晩秋 平福百穂筆 その127
絹本水墨淡彩軸装 軸先樹脂 共箱
全体サイズ:縦2200*横550 画サイズ:縦1200*横410
晩秋の風景の中に人物を小さく入れることによって背景の広大さを表現しており、平福百穂の場合には、郷愁のようなものが伝わってきます。
独特の繊細な筆致が平福百穂の特徴でもあります。
本作品はおそらく大正期の作で、晩年の山水画の集大成に繋がる作風がうかがえます。
表具は作品に似合うセンスのよいものですね。
共箱となっています。
筋の良い作品ですが、この頃の作風には贋作が多いので要注意です。南画が行き詰まりを見せ、複数の南画家が平福百穂の贋作に手を染めた可能性があります。
古来からの浅絳山水画の色遣いをさらに進化させているとも言えますね。
*浅絳山水(せんこうさんすい):うすい代赭(たいしゃ)(=赤褐色)と藍を主色とし、淡墨をまじえて描いた山水画。瀟洒(しょうしゃ)な趣をもつので、元以後、文人画家が好んで描いた作風。
郷里の風景(秋田県南部の角館出身)を思い起こして描いた作なのでしょう。
平福百穂は郷里に岩手方面からの峠越えをして、たびたび帰省していたようです。