
ワインの諺で最も有名なのは、新約聖書の福音からの問答。ヨハネの弟子達は「なぜあなたの弟子達は断食をしないのか」とイエスに尋ねる。イエスは答える。
「新しいぶどう酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。そうすれば、両方とも長持ちする」(マタイ9)。「また、だれも、新しいぶどう酒を古い革袋に入れたりはしない。- そんなことをすればぶどう酒は革袋を破り、ぶどう酒も革袋もだめになる。- 新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ」(マルコ2)。「。。。。古いぶどう酒を飲めば、だれも新しいものを欲しがらない。『古いもののほうがよい』と言うのである」(ルカ5)。
もちろんここでの新旧は、キリスト教とユダヤ教を指すのであろうが、喩えるのには必ず根拠がある。一つ目は、酵母で醸造する時にワインは30倍以上の容積の気化膨張があり古い革袋では破裂するという説明。二つ目は、タールで密閉して革袋に保存するので古い酵母が革袋の内側に付着していると発酵が止まらないという説。もっとも若いワインとはギリシャ語で発酵前の葡萄ジュースを意味するとある。すると、ルカによる福音のルター訳「古いワインの方がまろやかだ」は明らかに矛盾する。アルコールがジュースよりまろやかなことはありえないからである。宗教解釈は神学者にお任せする。それでも若い赤ワインを古い赤ワインと比べた場合、赤ワインが古ければ必ずしも好いと謂うものでもない。やはり考えられるのは赤ワインのタンニンの高い含有量である。当時のパレスチナの葡萄種は、ボルドーのカベルネ・フランのように渋かったのだろう。因みに現在のイスラエルのワインは、儀式用を除けば白、それもリースリングが主と言う。