Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ベッティーナ-七人の子供の母

2005-03-16 | 
最後の五マルク紙幣を飾っているのが、ベッティーナ・フォン・アルニムである。この小悪魔的で、お喋りな女性は、1785年にイタリア商人を父に7番目の子供として生まれる。兄は、クレメンス・ブレンターノで「子供の不思議な角笛」の編者として著名である。その共同編者で友人のフォン・アルニムと結婚して現在の姓となる。

修道女生活を経て、フランクフルトに在住の少女の時代、様々な芸術家と交流する。あるユダヤ人女性を通してゲットーの実情を知る事となると記してある。

19歳の時から巨匠ゲーテに手紙を書き、その母親と文通を始める。こうして巨匠の死後、この親子の手紙を綴り彼女の出世作となる。1810年までの間に南ドイツを中心に盛んに知己を広げ、その中でも詩人ルートヴィヒ・ティークとベートヴェンは特筆される。そのような訳で当時絵画と音楽に専心したとある。ゲーテの詩につけた作曲もある。

1811年からの夫との結婚生活も二十年後にアーヒムの死によって終わりを告げる。その後に活動は本格的となり、社会民主主義的傾向を持って、架空書簡形式の創作等を発表する。特にプロイセン王のフリードリッヒ・ヴィルヘルムIV世とその母親との架空の手紙は発禁処分となっている。

今回、プロイセン王本人との書簡などが全集の第四巻として出版された。それと並んで、ベルリンのシャウシュピールハウスの設計者でもあり「魔笛」などの舞台装置で有名な建築家カール・フリードリッヒ・シンケル、クララ・シューマンやフランツ・リストらとの書簡が、実務的から文学的な幅広い雑多な様式の172通の手紙に含まれている。

彼女から熱い手紙を受け取って当惑した、貴族や有名人や学生は多い。その他にもロベルト・シューマンや若きブラームスさらにメンデルスゾーンが彼女の訪問を受けている。国王から一介の学生にまでに影響を及ぼした先進的な女性の目を通して見えるのは、ドイツ統一と第二帝政への創成期である。それと重ねてドイツ関税同盟のドイツロマン主義最盛期を、欧州統一の今日から振り返ると言うの作為的過ぎるだろうか?

彼女の詩に、「孤独に浸る人は」というのがある。表題に続き世事に勤しむ人は、ミューズの女神に身を捧げる人はと来て、ミューズの女神は喜びも悲しみも神聖化して文芸は永遠となると詠む。さらにそれが心の中で燃え上がるが、天国的な中でこれらは悉く世俗的だと何処かで気づいていると結ぶ。先に世を去ったロマンティカーの夫よりも随分と現実的で冷めているようだ。
コメント (8)
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