Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

試飲百景-深い香りの中で

2005-03-02 | 試飲百景
客人があって、二軒のワイン醸造所で試飲をした。試飲の内容は改めて報告するが、先ずはその風景から。旧知である同行者のワインに対する判断に驚き、味覚の蓄積と呼べるような学習効果を目のあたりにした。このどちらかと言えば下戸の人間が、この間数多くのワインを口にしてリースリング愛飲家に「成長」して行く過程は瞠目に値する。既に香りを吟味する時点での達人のような態度を玄人は見逃さない。集中した試飲となる。

試飲室に入った時は、月曜午前中に関わらず先客が居た。その先客が語るには、近所の巷のワイン農家で赤ワインなどをそこへ来る前に物色してきたという。ヴィンテージについて意見を語って貰った。彼に言わせると、2003年の記録的な猛暑が与えた影響は大きくて赤ワインには大変満足しているという。それに較べてこの名門のリースリングは想像していたように十分な陽の恵みが得られていないと感じたようだ。結局、リースリングでなくてムスカテラーと云う特別な味のワインを買い込んで行った。この30代前半の男性の嗜好は理解出来る。この趣味は極一般的なのだが、見るからにワイン愛好家だけにこの男性の学習力の限界は残念である。各々が独自の趣味と感性を持って選択するのは麗しい。しかし、その差異に気が付かずにいるのを見るのは悲しい。

審美眼と云うような難しいことではない。要するに、この先客はそれまでの試飲でめぐり会えたであろう良きアドヴァイスを聞き逃しているのである。自分の嗜好に合う意見のみが蓄積され、他人の違う指摘に耳を傾ける事はなかったのではないだろうか。好き嫌いの選択ではない。鈍感なのである。視点ならず感点の相違に気が付いていない。ワインの消費には、其々の目的があって一概に言えない。食事抜きで飲料を楽しむ人、寝酒にする人、ワインに合わせて料理をする人と様々である。しかし、質の評価とこれは別物である。その好人物だが神経の十分に張っていない先客が支払いを終えて先に席を出て行った。

それに較べ同行者の含蓄のある意見は、高級リースリングの本質に迫っていた。香り、酸の出方、残り味等々である。特に「青臭いの表現」は、通常ワインに使われる事がないので気を引いた。地所の土地組成への興味や特定の地所への思い入れも、昨今のドイツワイン協会のグランクリュ等級制への取り組みに対応している。彼は、ワインの書物などを殆んど読む事もなく、只自宅では今まで100本程のドイツワインを試し、旅先で世界中の様々なワインを試した。こうして辿り着いた結論は、リースリングワインは最高の白ワインでありこれに比するワインは少ないという事である。確かにこれは正しくて、フランスのパフュンのような軽やかさを除けば、フランスの白ワインはドイツのリースリングをなかなか超えられない。

高級ワインの醸造と天の配剤に気づく事は、確信と喜びを知る事そのものである。これは芸術文化の美の意識や巧みに相当する。古い醸造所の敷地に町の古井戸があった。これは、16世紀中旬まで公共で使われていた。写真の井戸水のように、ワインの芳香は汲めども尽きない。
コメント (3)
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