Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

飛び地に生きるロマンシュ語

2005-03-13 | 生活
トップ・オヴ・ザ・ワ-ルドをコピーとするサン・モリッツは、海抜1856メートルに位置する。ドライ・シャンペンのような気候とも謳うだけあって、年間平均322日間太陽が降り注ぐ。そのようなイメージや高賃金を見込んで、観光関係従事者も多くの外国人労働者が集まる。だから意識して地元の人と接触しないと、ここがロマンシュ語の地域である事に気が付かない。

この言語は、スイスの第四の公用語でラテン系言語である。これに近い言葉を使う地域は、欧州内で数箇所あるようだが、飛び地になって存在するドロミテ渓谷の四つの谷の存在が最も興味を引く。お互いの土地で聞くところによると、その言語は殆んど変わらないと言う。直線距離で200キロほど離れ、途中には海抜2000メートルを超える峠が最低二つは存在する。ドロミテの場合は、イタリア政府が少数民族政策を採っていないのでロマンシュ語は公用語とはなっていない。そこから峠を越えて、この両飛び地の間に位置するのが、ハプスブルクの権勢のもとに発達したドイツ語圏南チロルである。両飛び地の直接の交流は皆無なので、双方とも古の文化を谷深くで保持していると考える事が出来るだろう。

サン・モリッツのあるエンガディーンの谷から西に向かいユリアパスを越えて、ライン渓谷へ降りて行くとクーアという町がある。そこから更に河を下るとワインが栽培されている。そこのマリエンフェルトのピノ・ノワールを飲んだ。シュペート・ブルグンダーならずそこではブラウ・ブルグンダーと呼ぶ。オーストリーも同様で、写真で見る限り葡萄の色が青く黒ずんでドイツのものよりもピノ・ノワールに近いのかもしれない。2003年産のこのワインは、14パーセントという通常でないアルコール濃度であった。軽さを備えていたので、表示を見るまではその事に気が付かなかった。その地方でそれ以上のご当地物を求めるのは所詮無理である。それ故に、それなりに貴重なワインであった。

高所にはワインは育たないので、近くの谷のワインを消費する事になる。それでも何故か、ドロミテの谷で飲んだアルコール類とここで飲んだワインがどこか共通しているように思う。高度の影響ではなくて、ご当地の人や形に通じる素朴な共通点がある。素朴と言っても、ドイツ語圏やトスカーナやスコットランドのような粗野な感じがないのも好ましい。
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