Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

根気強く語りかける

2005-11-17 | 文化一般
中華人民共和国のフウ・ジンタオ主席が先週末三日間のドイツ訪問を終えた。ケーラー大統領の歓迎の挨拶は大変厳しかった。「中国はその経済力に見合っただけの責任を持って、我々の国際社会に受け入れられるべく、人権を尊重しなければいけない」と言うのをTVの生放送で聞いた。非常に良く作文されているので、内政干渉でもなく、反論を許さない歓迎の辞となっていた。欧州の対中国の姿勢は、人権を楯にとってその覇権主義の政策を囲い込む。それでも、流石に中国側も好き勝手に言わせてはおかず、他のレセプションの席では「何処そこの辺境の地域では新たに大量の職場を作った」と、低成長下に喘ぐドイツの政治家をその数字で唸らすのである。何れにせよ、中国の政治姿勢を根拠に対中国武器輸出凍結には変化は無く、中国側も話題にはしなかった。寧ろ、六カ国協議での中国の役割を評価して、国際社会での役割を自覚させる事に主力が置かれた。

先に伝えた北京での「指輪」上演やベルリンやシュトッツガルトの交響楽団の北京や上海での公演は、他のポゴレリッチやタベア・ツィンマーマン等の出演と並んで、欧州音楽文化紹介の活況の呈をなしている。サイモン・ラトルとベルリナーフィルハーモニカーの二十五年ぶりの訪中公演のチケット価格を見ると最高の券が400ダラーほどしているので、海外公演とは言えザルツブルクよりも高価である。その二つのプログラムは、その後のソウル、香港、台北!や東京での全12回の今回の極東公演の根幹を成している。

トーマス・アデー作曲の「アジーラ」(難民の複数形)なども、北京公演の様子が撮影されたようなので、そのタイトルからして重要な役割を果したのだろう。「英雄の生涯」と「英雄交響曲」の対応も良く、「海賊序曲」というのも大いに気になるところだ。何れにせよ、繰り返し繰り返し文化的メッセージを送っていく事が肝要である。それ以外にも「マーメールロワ」のパゴタの塔などにオリエンタリズムが混ぜられているのにも気が付く。

SWRの公演の方は、当たり障りの無いプログラムで、指揮者ノーリントンの特徴は二曲のブリテンとエルガーの英国の曲に出ているのだろうか。CDの売り込みとの兼ね合いもあるのだろう。指揮者の芸術的意図から、中国で待ち望まれていたようなオーケストラサウンドではなかったようだが、その意図が充分に理解されたのか、示されたのかどうかも、そのプログラムを見る限り不明である。しかし日本のような集中した聴衆でもなく、当地の不慣な聴衆にも、パリ在住の中国人作曲家の新曲などが概ね好意的に受け取られたとある。

何がどの様に解釈されて理解されるかは、皆目分からない。受け取り手に投影されるものは計算出来ないので、素直にオープンに根気強く語りかけるしか方法はない。



参照:
麻薬の陶酔と暴徒の扇動 [ 生活・暦 ] / 2005-11-02
終わり無き近代主義 [ 文学・思想 ] / 2005-09-03
無料情報の客観主義 [ 文化一般 ] / 2005-08-10
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする