Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

時間差無しに比較する

2006-03-21 | 
サンモリッツの朝焼けである。これからダヴォースを向かおうと思う。数年前に初めて列車トンネルが開通した。ここエンガディーンの谷からダヴォースへの「冬の旅」は、嘗ては不可能であった。夏以外は峠越しが出来ないからである。快晴続きの春日和ではあるが、ここエンガディーンの谷間は未だに零下の日々が続いている。本日は温かくて、摂氏マイナス8度である。

一昨日、バーゼル経由でここ谷間の高級リゾートポンテルジーナに辿り着いた。車を走らせていても、太陽が眩しく、エアコンの設定温度を低めに設定しないと厚手のセーターでは汗ばむ。土曜日の高速道路は、スキーを積んで春スキーを楽しもうとする車も多く、混雑をさえ予想させた。

スイスのドイツ語レトロマン語の文化波DRS2局が、カール・ニールセンの交響曲「不滅」の聞き比べを流していた。そのタイトルのお蔭か比較的知られている曲であるが、北欧文化に興味を持っている人ぐらいでないと馴染みが薄い。だからこの様な企画での選曲としては面白いと思った。所謂通俗名曲の聴き比べよりも遥かに価値がある。特に部分を選んでの聞き比べは、それぞれの解釈から作曲の個性が見えてくるので、回数を重ねて研究目的で聴いたぐらいに、この交響曲の現在に於ける評価や演奏史の片鱗が解る。ゲスト二人の推薦盤を紹介しながらプロデューサーの司会で、聞き比べと講評を以って番組が進行する。

前半は聞けなかったが、ベルグルント指揮デンマーク王立管弦楽団、ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団、イェルヴィ指揮イエーテボリ交響楽団、ロジェストヴィンスキー指揮ストックホルム交響楽団、シェーンヴァント指揮デンマーク放送交響楽団の演奏が比較された。参考にフォン・カラヤン指揮の録音にも触れられていたが、シェーンヴァント指揮の演奏に軍配が上がった。舞台の後ろと前に置かれたティンパニーの打ち合いも、第一次世界大戦後の消沈の時期にモラルの不滅を謳った曲として、力尽くだけでは表現出来ない妙を示していた。

実は番組の内容よりも、バーゼルで開催中のスイス全国会議に出席中、昼食時間を利用して時間を割いて貰い久しぶりに出会った、先ほど別ればかりの友人の言葉使いを番組のゲストの話し振りに見つけて興味を持った。聞いているとなるほどそのご本人であった。無饗室のマイクに載るとどうしても低い音域が強調されてしまうので、先ほどまで聞いていた声とは違うように聞こえたのである。ラジオは録音とは言え、こうした時間差の無い聴き比べを偶然に出来るのは珍しい。流石に会議中の本人に嬉しそうな電話は出来なかったが、「時間差無しの聴き比べ」を後ほどメールで本人にコメントしよう。

さて、エンガディーンの谷からトンネルを抜けてダヴォースにやってくると、そこは真っ白の雪が光輝く春である。サンルーフを開けて走ろうが、氷の上を歩こうが世界が眩しくて、日差しが暑い。温度計は、摂氏7度を指していて汗ばむ。更に高所で山一つ南国であるエンガディーンよりも、雪は遥かに多く、空気も大分重たい。



参照:
飛び地に生きるロマンシュ語 [ 生活・暦 ] / 2005-03-13
高みからの眺望 [ 文学・思想 ] / 2005-03-09
コメント (2)
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