Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

特産品を特別に吟味する

2008-03-03 | 試飲百景
嘗てここにも登場した試飲者が、再び訪ねてきた。既に15時を過ぎている。17時には日本へ帰るフランクフルトの空港で待ち合わせしていると言う。近くのエラーシュタットで、こちらのスタッフと前ワイン街道のワインを試飲購入後の訪問である。

こちらは、リースリングしか勧める気がないので全く別世界の話であるので、そこで購入した三本に想像を巡らし配慮することなく、醸造所に直行した。

予め電話をかけると、お目当てのヘアゴットザッカーは本日発売開始と言うではないか。一週間前の瓶詰めというから、まだまだ落ち着いていないのは周知である。

喜び勇んで、車に同乗して門を潜る。本日は嵐が過ぎ流石に街道で行き交う車も少ない。

さて、試飲室に入り、持ち帰り難いリッター瓶を外して辛口リースリングを試飲する。既に感想を書いていたフォンブールリースリングは素晴らしくなっており、賞賛の声が聞かれる。最後に些か苦味が残るのが難であるが、現時点では果物の苦味の様で問題がない。もしかすると2007年産で話題となる若い種の苦味かもしれない。

その次に勧められたのがムーゼンハングのキャビネットであり、これはグレープフルーツの香りと風味が素晴らしく、酸も活き活きとして有無を言わさず気に入ってしまった。試飲者には少し辛口過ぎると言うので半辛口方面へと方向展開をしようとするが、私が許さない。

そして次に比較として、ヘアゴットザッカーが出される。そしてモモの香りと示唆されるのは、この若い殆ど天然水のような透明な飲みものに、視認の為の色付けをしたようなものである。

そして、現在は最も落ち着いてバランスの取れたキーセルベルクが供される。これが最も試飲者に気に入った様で、流石に前回にもフォン・バッサーマンのキーセルベルクの良さを指摘しただけのことはある。

なるほど、彼は果実風味よりも、むしろこうしたストレートなワインを好んで、あまり柑橘類を好んで食さないことを思い出す。しかし、バッサーマンのそれを一押しで勧めているので、やはりここではヘアゴットザッカーに注目してもらうため、それを一押しした。

醸造所の勧め方は真っ当で流石にプロである。しかし、他の醸造所との比較において、そしてここの実力を思う存分示すためには敢えてそれに逆らった。仮に、二種類のキーセルベルクを比べた場合、バッサーマンの旨味にそれも日本の食生活では間違いなくブールのそれが引けを取ることが分かっているからだ。そう、基本的には米食をして時間の経ったリースリングしか入手出来ない日本の重い大気の中では酸が軽やかに飛翔することが難しいのか、辛口白ワインはどうしても重く沈み苦味を感じる。

それゆえに、酸と果実風味がバランスを取るために有用だとする趣もある。そうなると、個人的には珍重している岩石の味と酸が均衡して果実風味では無くナッツやその他の風味の多い辛口ラインガウのリースリングが、こうしたキーセルベルクの砂を舐めるようなクオーツの味に近い。しかし、砂利とあの千枚岩では味の深さが異なる。

結局、持って帰って貰った、フォン・バッサーマン・ヨルダンのライタープファードの青林檎風味と旨味の乗ったキーセルベルク、フォン・ブールのモモの香りのヘアゴットザッカーの2007年の収穫は、其々あと少なくとも一週間・二週間・二か月ほど寝かして置けば充分に各々最初のピークでそれを確認出来る筈だ。

そうすることによって、プフェルツァーヴァインの特産の最高の特別なものが遠く日本でも確認されるに違いない。どうして、同じ葡萄から、青林檎や桃やグレープフルーツの味が表れるのか?こうした興味だけでもこれほど面白い飲みものは他には無いだろう。

合成された青林檎味の飴やガムを口にするなら、それを「神の手」に譲りたい。醸造学が齎した科学の意味は計り知れないが、アルコールを受け付けない人には残念ながら、ワインの文化的な意味合いはやはり途轍もなく大きい。

さて、そのようなことを思いながらラインヘーレのファインヘルブに続いて甘口試飲を固辞して、最後にその代わり2005年産のペッヒシュタインとイエズイーテンガルテンの二種類のグランクリュを試飲させて貰う。鉄の焼けたような匂いを前者にとやや酸が飛んだあとの苦味を後者に感じてもらって、「日本酒に近い」という感想を聞きながら試飲を終えた。



参照:微妙に狂った設計図? (新・緑家のリースリング日記)
コメント
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