■ 今年は暑い ■
今年の暑さは半端ではありません。
先週は熱中症で、9436人の方が救急車で搬送され、57人死亡の方が無くなったそうです。
一方、国内ではこの暑さで、クーラや扇風機、ビールや、ヒエピタなど「暑さ対策グッズ」が大売れ。一説には、夏の気温が1℃上昇すると、1500億円の経済効果があるそうです。今年は平年を3℃程上回っているようなので、4500億円の経済効果があるかもしれません。
菅内閣がスタードから躓いて、ロクな景気刺激策も打てない一方で、偉大なる自然は4500億円の景気刺激をしています。しかも一銭の税金も掛けずに・・・。
■ 「猛暑は温暖化の影響・・」ってあまり言われない ■
昨年までなら、「猛暑は温暖化の影響!!」なんて見出しが新聞に躍ったのでしょうが、昨年のCOP15の失敗からか、はたまた「クライメートゲート」事件の影響からか、各誌とも短絡的に温暖化を扱う事に慎重になっている様です。
むしろ、二酸化炭素起源説の温暖化を今年の猛暑に絡めて喧伝すると、温暖化説がウソだという事がバレてしまします。何故なら、リーマンショック後の世界経済の低迷で、二酸化炭素の排出量が減ってい可能性があるからです。
尤も、北半球は猛暑ですが、南半球は大寒波が襲っています。チリやアルゼンチンでは寒さで家畜が死ぬなどの被害が出ている様です。
日本や北半球の猛暑だけで、地球全体の気温は推し量れません。
■ ラニーニョが猛暑の犯人? ■
今年の猛暑の犯人は、「ラニーニョ」だと言われています。
「エルニーニョ」は既に有名ですが、「ラニーニョ」に聞き覚えが無い方も多いのではないでしょうか。
「エルニーニョ」は、ペルー沖の東太平洋の水温が例年より高くなる現象です。東太平洋の気圧が低くなり、西太平洋の気圧が高くなります。エルニーニョが発生した年は、日本では「暖冬・冷夏」の傾向が現れます。
「ラニーニョ」は逆の現象で、ペールー沖の東太平洋の水温が低くなり、東太平洋の気圧が高くなり、西太平洋の気圧が低くなります。ラニーニョが発生した年は、日本では「厳冬・酷暑」となる傾向が現れます。
■ 貿易風の変化が「エルニーニョ」や「ラニーニョ」を作り出す ■
何故ペルー沖の海水温に変化が現れるかというと、その原因は貿易風にあります。
貿易風は赤道付近を東から西に吹いていますが、何らかの理由でこの貿易風が弱まると、東太平洋に暖かい海水が停滞して、東太平洋の海水温が上昇し、エルニーニョが発生します。
反対に貿易風が強く吹くと、東太平洋の表層の温められた海水が大量に西に移動して、変わりに冷たい海水が下から湧き上がってきます。
■ 地球規模の気象の変化の原因? 熱塩循環と深層海流 ■
「何らかの原因による貿易風の変化」を生み出す原因とは、いったい何なのでしょうか?
一説には「熱塩循環」の変化がその原因ではないかとも言われています。
「熱塩循環」は地球を巡る大きな海水の流れです。
① メキシコ湾流に乗って大西洋を北上した暖かな海水は、北極圏で冷却される。
② 海水の一部は海氷となる。
③ 氷が生成する過程で、塩分が締め出され、海水の塩分濃度が高まる。
④ 塩分濃度が増し、冷却された海水は比重が高まり、下降する。
⑤ 深海の海盆を高塩度の冷たい海水が満たす。
⑥ 海溝など深海の裂け目を通って、高塩度の冷たい海水があふれ出す。
⑦ 徐々に塩分を失いながらアフリカの南端を経て北上する
⑧ 一部はインド様で表層に浮かび上がる
⑨ 残りは、北東太平洋で表層に浮かび上がる
⑩ 再び表層海流となり、メキシコ湾流として北大西洋に戻る
放射性元素の測定によると、「熱塩循環」の1サイクルは2000年と判明しています。表層の海水は風の影響を受けて比較的高速で循環しますが、「深層海流」の循環速度は遅く、1cm/秒程度です。
全ての海水が「熱塩循環」のサイクルに乗るのでは無く、多くの海水は表層海流として、海の表面を循環しています。
■ 気象を支配する「海水」 ■
水は空気の1000倍の比熱があります。同体積の水の蓄えられるエネルギーは空気の1000倍です。その為、空気の温度である気温は、海水温の影響を大きく受けます。
例えば、北半球で太陽エネルギーが最大に降り注ぐのは夏至の6月20日頃ですが、気温が最も高くなるのは8月です。海水は比熱が高く空気より温まり難く、海水が最高温度の達するのが8月になるからです。
気温の変動には、一日の気温変動や、月毎の気温などがありますが、一日の気温変動は日射に影響を受けます。日の出から気温は上昇し、午後2時頃に最大を向かえ、それから低下し始め、日の出前に一日の最低気温となります。空気は比熱が低いので、日照によって直ぐに暖められ、日没と共にどんどん冷えて行きます。
日照による一日の温度変化のベースに、さらに海水による緩やかな気温変化が加わります。これは、気温の季節変動として表れます。
さらに、何年、何十年、何百年という周期での気温変化が存在します。地球に降り注ぐ太陽のエネルギーは比較的定常的で、地球規模の気温変化の原因にはならないと言われています。
一方、海水のエネルギー変動は気象に大きな影響を与えます。
表層海水は太陽によって直接暖められる海水ですから、その温度は地球規模で平均化すれば、現在の太陽の活動をリニアに反映していると思われます。現在の太陽のエネルギーが定常的であるならば、表層海水の蓄えるエネルギーも定常的であると考えたれます。
一方、熱塩循環によって深層海流を形成した海水は、2000年前の気温の影響を受けた海水です熱塩循環が、現在の太陽の活動とは異なる周期の影響を気象に与える可能性は否定出来ません。
■ 対流は定常的なのか? ■
熱延循環が定常的であれば、気象変動に原動力にはなり得ません。しかし、対流が定常的であるとは限りません。水は粘性を持っていまうから、暖かい表層水を押しのけて冷たい深層水が浮かび上がる時に、水塊となって浮上する事も十分予想されます。
この様な、定常的でない振る舞いを深層海水がするならば、熱塩循環が、エルニーニョやラニーニョの原因となる可能性は否定出来ません。
さらに、2000年前の気温変化をメモリーしているとすれば、現代の気温変化にも少なからぬ影響を与えるかもしれません。
■ 気候変動は複雑系 ■
気象や気候は複雑系の上に成り立っています。最近は単純な二酸化炭素の温室効果のみによる気温上昇説は、全く説得力を失っていますが、人間が気候のメカニズムを完全に理解するまでには、まだまだ多くの時間と観測結果の蓄積を必要とするでしょう。
コンピューターの進歩も目覚しく、シミュレーションの制度も向上していますが、熱塩循環のモデル化も出来ていない状況で行われるシミュレーションにどれ程の信憑性があるかは、中学生レベルでも分かる問題だと思います。
二酸化炭素による地球温暖化を主張するICPPに最も欠けているのは、自然に対する敬意の気持ちでは無いでしょうか。