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アイルランドは事実上のデフォルト?

2010-11-04 18:26:00 | 時事/金融危機




■ アングロ・アイリッシュ・バンクがデフォルト ■

結構大事なニュースなのに何故か世間では殆ど騒がれていないのが、アングロ・アイリッシュ・バンクのデフォルト。

アングロ・アイリッシュ・バンクはリーマンショックで経営難に陥り、アイルランド政府が国有化した銀行です。云わば、アイルランド版のリソナ銀行。

そのアングロ・アイリッシュ・バンクの債券の価値を元値の20%に圧縮するとアイルランド政府が発表しました。

<毎日jpより引用>
http://mainichi.jp/life/money/news/20101023k0000m020008000c.html

アイルランド:国有化した大手銀行 事実上の債務不履行に 

アイルランド政府が国有化した同国の大手銀行アングロ・アイリッシュ・バンクは21日、総額約35億ユーロ(約4000億円)相当の劣後債を整理すると発表した。事実上の債務不履行(デフォルト)。負債を減らして自己資本比率など財務内容を改善するのが狙い。

 08年秋の金融危機の直撃を受けたアイルランドで銀行の債券がデフォルトに陥る初のケース。対象債券を保有する金融機関には多額の損失が発生する。日本の金融機関が同債券を保有しているかは不明。

 約15億7500万ユーロ分は、元の20%の価値の新たな政府保証付き債券と交換。約19億3000万ユーロ分は5%相当の現金を支払う。今回のデフォルトで、他の金融機関が発行する同種債券の価格が下落するのは必至。欧州では、アイスランド最大手カウプシング銀行が発行した円建て外債(サムライ債)が08年にデフォルト、大手邦銀などが損失を被った。(共同)

毎日新聞 2010年10月22日 18時10分

<引用終わり>

■ アイルランドは事実上の国家デフォルトでは? ■

「国有化した銀行の債券がデフォルトする」という事は、国家が補償した銀行の債券がデフォルトする訳ですから、実際的には国家破綻を意味するのでは無いでしょうか?

アイルランドには債務の支払い義務があり、国家としてその義務が果たせないという事は国家破綻と同義のはずです。

ちょっと調べてみたら、問題の劣後債の国家補償は9月29日までの期限付きでした。・・・・限りなくインチキ臭い処理と言えるでしょう。劣後債ですから、アングロ・アイリッシュ・バンクが破綻した後では、殆ど紙屑同然になってしまします。それよりも20%に減額されても政府が保証してくれるなら、その方がオトク・・・劣後債の所有者がそう判断するしかありません。

■ ギリシャは騒がれて、アイルランドは隠される ■

同じPIGSと揶揄されたギリシャはデフォルトしていませんが、あれ程騒がれました。
ところが、アイルランドは事実上の国家デフォルトでも殆ど騒がれません。
この違いな何なのでしょう?

ギリシャ危機は、ヨーロッパ各国が巨大な財政出動をしている最中に発生しました。ユーロッパ各国はギリシャ危機の後、緊縮財政へと政策を180度転換します。

ギリシャ危機は緊縮財政政策への口実として使われた感あります。

一方、ヨーロッパ各国が財政再建路線に切り替えた後のアイルランドのデフォルトは、財政再建路線に水を差しかねません。

ユーロ危機が再び吹聴されてば、緊縮財政で減速を余儀なくされているヨーロッパ経済に大きなダメージを与えます。

■ 格付け機関の反応も鈍い ■

ムーディーズなどの格付け機関の反応も鈍いようです。アイルランド銀行とアングロ・アイリッシュ・バンクの格付けを地味に1段引き下げただけでし。

ドル安政策を推進するアメリカにとって、ユーロ危機の再来は喜ばしくありません。

オバマ政権は中間選挙前に今以上のマイナス材料を増やしたくありません。
景気回復の遅れが最大のマイナス要因と言われる中、ヨーロッパの危機が喧伝されれば、アメリカの不景気をいやが上にも意識せざるを得ません。

■ 危機は深化しているのに異様な静けさ・・・ ■

アイルランドに限らず、金融危機は深化しています。ここに来て、米大手銀行の収益も悪化しています。しかし、リーマンショック直後の様な危機感は世界中から薄らいでいます。

「危機に慣れてしまった」と言えばそれまでですが、私には、嵐の前の静けさに感じられて仕方がありません。

アメリカが新100ドル紙幣の発行を延期した事と合わせて、「何かの仕掛け」が発動するタイミングを計っているような、不気味な気配を感じます。

可能性としては、中東危機か中国バブルの崩壊でしょうか?金融危機の再来は不可避となりつつある現状で、人々の関心は「いつ」と「どの様に」に移っています。

仕掛ける側は、不意打ちこそ最大の効果を発揮しますから、イベントの予測は困難でしょう。私達に出来るのは、心の準備くらいでしょう。