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カタールの不思議・・・敵の敵は友?

2017-06-14 04:49:00 | 時事/金融危機
 

■ 中東の小国カタール ■

カタールはペルシャ湾に位置する中東の小国でせすが、豊富な石油と天然ガス資源を有しています。日本では1993年サッカーワールドカップ予選での「ドーハの悲劇」の場所として記憶している方も多いのではないでしょか。

このカタールがサウジアラビアとUAE、バーレーン、エジプトなど中東6各国から国交を断絶されるという状況に陥っています。

原因はカタールがシリアでアサド政権に攻撃を繰り返すムスリム同胞団を支援した事です。カタールは中東の春では反政府勢力に積極的に肩入れし、中東の反米政権の崩壊を裏で仕掛けていました。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)も同様に反政府勢力(アルカイーダなど)を支援していたので、同じ穴のムジナだとも言えます。

■ かつてはムスリム同胞団を支援し、最近は敵視するサウジアラビア ■

ムスリム同胞団はエジプトで結成された組織です。結成当時からイスラム教スンニ派の厳格主義(サラフィー主義)の影響が強いムスリム同胞団は、エジプトで社会主義政権を樹立したナセルに弾圧を受けます。サウジアラビアはアラブでの社会主義の台頭を阻止する為にムスリム同胞団を支援し、彼らを国内に受け入れます。ムスリム同胞団はサウジアラビア国内でイスラム大学を設立し、エジプト国内で彼らの思想を支持する国民も増えています。

サウジアラビアはムスリム同胞団同様にイスラム教スンニ派の厳格主義ですが、宗派は異なりワッハーブ派です。かつてイスラム原理主義として弾圧されていたワッハーブ派をサウジ王家は保護し、国教とします。しかし、サウジアラビアの東部油田地帯にはシーア派の住民が多く、さらにムスリム同胞団の影響力が国内で強まると、サウジ王家にとっては脅威となります。

同じスンニ派の厳格主義(原理主義)ではありますが、ムスリム同胞団は現実的な一面も持ち合わせており、でシリアを始めアラブ各国で勢力を伸ばしています。一方、ワッハーブ派はサウジ王家によって国民に押し付けられた宗教とも言えます。

そこで、近年、サウジ王家はムスリム同胞団を敵視し始め、エジプトでアラブの春によって政権を取ったムスリム同胞団のモルシー政権を敵視し、その崩壊を仕掛けます。

■ モルシー政権やシリアの同胞団を支援するカタール ■

サウジアラビアがムスリム同胞団を敵視する一方で、カタールはエジプトやシリア内戦で同胞団を支援し続けました。これが両国関係を悪化させ、2014年には両国が大使を引き上げるという事態が発生しています。(カタール国王がサウジ王家打倒を画策したとも噂されています。)

その後、両国関係は改善したかに見えましたが、今回、トランプ大統領がサウジアラビアを訪問した直後に、サウジを始めとする中東6各国が突然カタールとの国交を断然します。

■ 不思議の国カタール ■

実はカタールは不思議な国で、豊富な石油・天然ガス資源の輸出で国民一人当たりのGDPは世界1位です。近年はアラブの金融センターを目指すなど、天然資源が枯渇した後の対策も初めています。アメリカとの関係も良好で、中東最大の米軍基地を擁しています。

一方でアラビア語放送のアルジャズィーラ放送はカタール政府が設立しました。湾岸戦争当時、米軍のPRを垂れ流すCNNに対して、アルジャズィーラは戦火に苦しむアラブの人々の姿を放送して中東の人々の支持を得ますが、実はアルジャズィーラにはロスチャイルドの資本が入っていると言われています。要はCNNとアルジャズィーラが現在の宗教戦争を煽ったのだと・・・。

さらにアルジャズィーラ放送はサウジ王家の独裁や、エジプトのムバラク政権を批判する番組を放映するなど、中東の団結に亀裂を入れる様な番組を作っていました。サウジアラビア王室がカタールを敵視するのには、それなりの訳が在るのです。

いずれにしても米英を敵に回して金融センターが成立するはずも無く、カタール王家は米英の傀儡国家だとも言えます。

■ イランに急接近するカタール ■

中東6各国から断交され、物資の流通もままならないカタールが泣きついたのは何とイランです。

本来、スンニ派(ワッハーブ派)のカタールとシーア派のイランは犬猿中のはずですが、近年は両国地下で繋がるガス田を共同開発するなど、独自の外交政策を取り始めています。

イランと犬猿の仲のサウジアラビアとしてはイランに接近し始めたカタールは許しがたいが、イランに融和的政策を取っていたオバマ政権にあからさまに敵対する事も避けたかった。

今回、トランプ大統領がサウジを訪問した直後にサウジなどが国交を断交した事から、トランプのイラン制裁強化の意思を受けてサウジはイランに接近するカタールを制裁のでは無いかと言われています。

ところが、これによってカタールとイランの関係が急接近します。カタールはイラン経由で食料などの物資を調達し、イランもそれを支援しています。

■ 複雑化する中東の政治地図 ■

イランはシリアのアサド政権を支援しています。しかしカタールはアサド政権打倒を画策してシリア国内の同胞団やISを資金援助してきました。

カタールがシリアに拘る理由は、シリアが中東からヨーロッパ大陸に伸びるパイプラインの要衝にあるからで、そこにカタールと対立するシーア派のアサド政権が存在する事はカタールにとっては大変な不都合なのです。何故ならば、シリア国内でパイプラインのバブルを閉じられてしまったら、中東からヨーロッパへのガスの輸送が絶たれてしまうからです。

同様にイランからのパイプラインもシリアを経由するはずで、シリア内戦とは実はパイプラインの覇権を巡る戦争だとも言われています。



シリアのアサド政権の後ろにはロシア、中国、イランがおり、イラクも今やシーア派のイランの影響が強い。ここにカタールが加わると・・・中東の政治地図が一気に複雑化します。カタールの背後に居るのは米英だからです。

■ 追い詰められたのはサウジアラビアでは無いのか? ■

どうも今回の事件、追い詰められたのはカタールでは無くサウジアラビアの様な気がしてなりません。

サウジアラビアはオバマ政権の邪険にされていましたが、同様にオバマ政権から疎まれていたイスラエルのネタニヤフ政権と接近する気配を見せていました。今回のカタールとの断交の理由の一つにカタールがイスラエルと敵対するハマスを支援している事を挙げています。

イスラエルはかつて中東において四面楚歌の状況でしたが、現在はイラクもシリアもリビアもエジプトもイスラエルと敵対するだけの国力は有していません。後は中東の両雄のサウジアラビアとイランをどうにかすれば良い。

中東の政治原理は「敵の敵は味方」です。国内にシーア派勢力を抱えるサウジアラビアにとっては、目下の敵はイスラエルでは無く、シーア派革命の輸出を画策するイランです。むしろ対イランにおいてはイスラエルは味方となります。

■ 次回の中東戦争は変な組み合わせになるかも知れない ■

かつては中東戦争はイスラエルとアラブ諸国の間で戦われました。

しかし、次回の中東戦争はイランとサウジアラビアの間で勃発すると私は妄想しています。その為の下準備が今回のカタールとの断交。

尤も、ロシアとイスラエルが関係を改善しているなど・・中東の政治地図は複雑怪奇で予想を裏切る事が多いのも事実ですが・・・。