『彼女、お借りします』OPより
このOP、カワイイよね。PO,EDで登場人物が踊るのはアニメから始まった演出ですが(なぜ踊るんだろう?インド映画か?) 実写ドラマでも採用され、それがアニメにフィードバックした様なOP。自撮りのカメラをクィってやる演出も実写的で可愛い。
EDもヒャダインの作曲が冴えています。
■ DT男子の頭の中は〇〇〇の事でイッパイ!! ■
今期アニメ、第二期、第三期以外の作品に、目新しいものが無いのですが、『彼女お借りします』は頭二つ程、他の作品より目立っています。
少年マガジン連載の「ラブコメ」ですが、流石はマガジン。安定した面白さです。
特にイケメンでも無い普通の大学生の和也は「DT男子」。同じサークルでイイ感じになった麻美ちゃんと〇〇〇する日を妄想して日々を過ごしています。ところが、そのギラツキをウザがられて麻美ちゃんに振られてしまう・・・。
失意の和也は、ついつい「レンタル彼女」なるサービスを利用してしまいます。待ち合わせ場所に現れた千鶴は、人々が振り返る程のお嬢様系の美女。そんな彼女が、本当の彼女の様にデートしてくれるのですからDT男子にタマラナイ。
ただ、デートの最初にお金を払って、約束の時間が過ぎれば「又のご利用を・・」をと去って行く。虚しさが倍になって押し寄せて来ますが、和也はついつい次のデートの予約を入れてしまいます。
病気に祖母に千鶴を「彼女」と紹介して事で引っ込みが付かなくなり、ズルズルと千鶴との「デート」を続ける和也ですが、だんだんと千鶴に心を奪われて行きます。しかし・・相手にとって自分はただの「客」。
一方でプロであるハズの千鶴の和也の言動にペースを乱されます。「客」相手のサービス以上の事をする羽目になります。本来なら断れば良いだけなのに、何故か邪険に出来ない。和也の必死で惨めな様に、ついつい押し切られてしまいます。
何一つ特別なものを持っていないDT男子の和也ですが、誠実なだけが取り柄。しかし、その誠実さは、和也の男友達も認める所でもあり、和也の最大の魅力なのです。
はたしてDT男子は、高根の花を射止める事が出来るのか・・・TV版は、突然和也にベタ惚れする別のレンタル彼女の登場で、俄然面白くなって来ました。
■ 二極化したラブコメ ■
少年漫画のメインジャンルのラブコメですが、その黄金期は80年代では無かったかと思います。やはり少年マガジンがこのジャンルのトップランナーだった。
柳沢みきおの『翔んだカップル』はこのジャンルの金字塔でしょう。不動産屋の手違いで同居する事になった高校生男女のアレコレを大学生になるまで描く作品ですが、「女の子といきなり二人暮らし」というDT男子には夢の様な出来事と、なかなか上手く行かない不器用な恋愛の現実実が、絶妙なバランスを保った作品です。いえ、むしろ一度付き合ってから別れたりと、今の「付き合ったらハッピーエンド」というオタクの脳内妄想的ラブコメよりも、リアルDTの現実がギッシリ詰まった作品でした。
漫画ファンにラブコメの名作はと問えば、多くの方が『タッチ』や『うる星やつら』や『めぞん一刻』を上げられると思いますが、私は『翔んだカップル』こそが、この時代のラブコメの金字塔だと疑いません。
マガジンは『胸騒ぎの放課後』とか『かぼちゃワイン』とか王道ラブコメの宝庫でしたが、サンデーはあだち充と、高橋留美子という二大巨匠がこれを迎え撃っていた。一方、ジャンプのラブコメって印象が薄いんですよね・・・『ストップひばり君』や『To LOVEる―とらぶる』の様に変な方向に尖がっているというか・・・。
いずれにしても、80年代は少年誌のラブコメの黄金期である事は間違いありません。(多分)

『翔んだカップル』より
その後も様々なラブコメ作品が発表されますが、「オタク妄想化」のベクトルと、「ドロドロ展開」のベクトルに二分れます。
ドロドロ展開は『翔んだカップル』の延長線にある作品群ですが、『君のいる街』や『ドメスティックな彼女』など、少年マガジンの伝統となっている感が強い。これらの作品は年頃の男女が付き合えば当然SEXもする・・・という現実的な視点で描かれているので、『青春の門』などの往年の青春小説の漫画版だと思えば分かり易い。
一方で「オタク妄想化」のベクトルはSEXは封印されています。何故なら読者がそれを望んでいないから。ヒロインは主人公と読者の性の捌け口であると同時に神格化しており、絶対不可侵な存在です。だから「薄い本」ではイロイロとされてしまうヒロインも、作品中でイロイロしてしまったら、ファンはドン引き、原作者にはカミソリが送られて来るでしょう。
■ シンプルなラブコメが受ける時代 ■
私も55歳になって、いまさらラブコメなんて言っているのがハズカシイお年頃となりましたが、未だにラブコメには胸キュンさせられてしまいます。
だいたい主人公達がハッピーエンドでくっ付いてしますと「ケ、リア充どもが!!」っと二度と見返す事の無いマンガやアニメのラブストーリーにあって、最近、何度も観れる作品がチラホラと出て来ています。
これらの作品の共通点は商業誌以外の媒体(ネット)から発表されている事が特徴です。(「恋は雨あがりの様に」はスピリッツでしたが)
これらの作品の特徴は「少女マンガ的」な所・・・脚に絡みつく様なネバネバしたDT男子特有の妄想が微塵も感じられない。だから商業誌の編集者目に留まらなかったのかも知れません。
しかし、ネットメディアで発表されると、読者の支持を広く集めます。男性、女性に関わらず読者が多いもの特徴では無いでしょうか。
商業誌だと読者層がかなりニッチにターゲッティングされていますが、ネットの読者は多種多様です。そんな、広く浅い層にアピールする作品がヒットするのが、昨今のラブコメの特徴かも知れません。
但し、中身が薄い訳では有りません。『Relife』のアニメなどは私は3回以上観てますし、「恋と嘘」もアニメ終了後の巻を買ってしまいました・・・。

『Relife』より
引きこもりの社会人を薬で若替えらせて、1年だけ高校生活を再体験させ、社会復帰させるという「リライフ・プロジェクト」の被検者となった海崎新。会社の先輩の自殺というトラウマを抱える彼が、高校生との触れ合いの中で、生きる活力や自分の能力を再発見する物語。同じ被験者の不器用な女子(高校生だと思っている)に28才のオヤジが惹かれてしまう・・・。ラストは「綺麗な終わり方」のお手本の様で、正座して観てしまいます。
アニメのサントラは「東京ザビヌバッハ」などで菊池成孔と組む事の多い坪口 昌恭が担当。現代ジャズの美味しい所が詰まっています。ポピュラーな一面もあるので現代ジャズファンにはお勧め。(ノイズ系では無いですよ)

『恋と嘘』より
少子化対策として厚生省のコンピューター遺伝子によってが夫婦のカップリングを決める「ゆかり法」が施行された日本。高校生になると相手が通知されます。ところが、通知された相手と違う子に恋をしている主人公は、相手も女子も自分をずっと好きだった事を知らされます。しかし、彼女は告白の後は急によそよそしくなり・・・・。もう観ていてモジモジしてしまうピュアなラブストーリーですが、そこがタマラナイ。・・・「消しゴムって最強の恋愛アイテム」じゃねと思わせる作品。

『ヲタクに恋は難しい』より
ヲタクがキモイ時代は過去の話。今ではイケメンもキレイなOLも普通にアニメやゲームトークに花が咲く時代。しかし、そんな真性ヲタクだけに恋愛は今一つ盛り上がりに欠ける・・・そんな現代のヲタク・アルアルが詰まった作品。実際に趣味が合うというだけでヲタク同志が付き合うと辛い思いをするでしょう。だって、コダワリ・ポイントは人によって微妙に違うから・・・。そこが「許せない」んだよね・・・。マターリとした現代の恋愛を上手に描いています。

『恋は雨上りのように』より
ラブコン枠からは少し外れる、オヤジと女子高生の恋物語り。怪我をして競技から離れた傷心の女子高生が雨宿りに入ったファミレスの店長のちょっとした気遣いに胸キュンしてしまう。店長からすれば娘の様な年頃の娘に告白されて、大人としてどう接して良いのやら・・・。中年オヤジのピュアが詰まった作品。実写化されていますが大泉洋がまさに適役。
映画『恋は雨あがりの様に』より
小松菜奈もいいんだよねーーー。アニメやマンガ原作の実写ってガッカリする事が多いのですが、これはイイ。(最近はamazonでドラマ「僕らがやりました」そ観てます)
■ 私、結構「恋愛脳」なんです ■
普段、「陰謀だ」「SFだ」「ノイズミュージック」だ・・・・と、ちょっとオカシな趣味全開の私ですが、実は結構「恋愛脳」です。良質のラブストーリーは大好物です。
何歳になってもラブコメやラブストーリーにドキドキ出来るって素敵じゃないですか。現実でカミサン以外にドキドキしない為にも、2次元でドキドキを解消する行為は、社会人として正しいと力説させて頂きます!!