■ 「出て行きなさい!!」 ■
記者会見でフォトジャーナリストの追及にマジ切れした今村復興大臣。ネットニュースでそのやり取りの仔細を読む事が出来ます。
1) 自主避難者の住宅支援が打ち切られる
2) 自主避難者の支援は国の責任では無いのか
こう追及する記者に大臣は次の様な見解を示しています。
3) 自主避難は自己責任だ
これに対して記者は「無責任だ」と大臣や国を非難し、今村大臣がキレます・・・。
■ 法的には国が支援する必要は無いはず ■
日本は法治国家ですから、「自主避難=自己責任」である事は明らかです。ただ、原発事故には国の責任もありますから、温情的に国は自主避難者を支援して来ました。
1) 強制避難地域の線引きは放射線量によってされている
2) 放射線量は事故当時よりも徐々に下がって来ている(セシウム137の半減期30年)
3) 強制避難地域の外側の放射線量も事故当時と比べれば下がっている
要は、国としては「問題の無い地域からの自主避難者はそろそろ帰って下さいね」というメッセージが自主避難者に対する支援の打ち切りだとも言えます。
■ 前橋地裁の判決は法的根拠とは未だ言えない ■
前橋地裁は先般、「自主避難者に対して国は東電と同様の賠償責任が有る」との判決を下しています。
「自主避難は自己責任」と言う大臣を批判する多くの方が、この前橋地裁の判決を例に取って「国にも責任が有る」と主張しています。
この判決を読むと、国と東電に責任が有るとするのは、「国も東電も津波が防波堤を超える予測が出ていたにも関わらず適切な対策を怠った」というものです。この判決に対して国も東電も控訴しています。
前橋地裁の判決をして「法的に国に責任が有る」と主張する人達は、日本の裁判制度を理解していません。日本は「三審制」ですから、被告である国と東電が上告している以上、最高裁の判決が法的な決定としての意味を持ちます。
そもそも前橋地裁の判決でも、自主避難地域の方のうち43人に対して7万から73万円の賠償を認め、72人の請求は退けています。ここでも線引きはされています。
■ そもそも避難する必要が無い ■
私はICRPの定める放射線の防護基準は厳しすぎると主張していますから、そもそも自主避難地域などは避難の必要性が無い地域だと考えています。
尤も、小さなお子様がいらっしゃる方などは当然不安を抱かれるでしょうから、自主避難は個人の選択肢として「安心とコストのトレードオフ」としては間違っていないと考えます。但し、このコストを国が払う必要があるかと言えば答えはNOです。
国は強制避難の基準を20mSV/年としています。これは外部被曝だけの数値ですから、内部被曝も含めれば50mSV/年程の数値となるでしょう。チェルノブイリでの強制避難の基準が5mSV/年でしたので、日本の国が定める20mSV/年という基準値が高すぎるという主張は当然在ります。
一方で、チェルノブイリでは強制避難による失業による精神的ストレスやそれによるアルコール中毒が問題となりました。放射線による被害よりも、強制避難による間接的被害の方が大きかったのです。
確かに「安全」だけを求めるならば、国の基準値は低すぎるという主張は間違っては居ません。ただ、強制避難が地域コミュニティーを崩壊させ、避難者の生活を不安定にする以上、「安全だけ」を重視した基準値の設定も多くの問題を抱える事になります。
■ 豊洲問題と酷似している ■
福島原発事故の自主避難問題は、豊洲問題を例に取ると分かり易い。
仮に市場が豊洲に移転したとして、地下水の汚染は取引される食品に一切の影響を与えません。しかし、豊洲が100%安全だと考えない消費者も居ます。その様な消費者が豊洲を経由した食品を購入しない場合、仮に余分なコストが掛かったとしても、その負担を都に請求する事は先ず不可能でしょう。都は「個人の安心」のコストを負担する義務を負わないからです。
福島の自主避難の問題も同様で、20mSV/年以下は「安全」とする国が、20mSV/年以下の地域からの自主避難者を支援したら、「国の定めた避難基準は何なの?」という事になってしまいます。この自己矛盾を発生させない為にも国は自主避難者の支援を継続させる事は合理性に掛けます。
現在の国が定めた20mSV/年を下回る地域からの自主避難は「安心」の為の避難であり、そのコストを本来国は追わないのです。
■ 前橋地裁の判決は、20mSV/年という基準の妥当性には触れていない ■
福島原発事故の損害賠償を命じた前橋地裁の判決に関しても、裁判長は「津波の予測が出来たにも関わらず、その対策を怠った」責任は認めていますが、20mSV/年という避難基準の妥当性には触れていません。
本来、自主避難の支援打ち切りに対する不服が有るならば、20mSV/年という基準値が妥当かどうかで裁判は争われなければなりません。しかし、この安全性、或いは危険性を判断する基準を科学は提示する事は出来ません。存在しない物は証明できないからです。(危険性が存在したとしても、ジョギングやストレスによる活性酸素の増加の影響の方が遥かに大きい)
■ 今村大臣の失敗は記者の挑発に乗ってしまった事 ■
私は今回の今村大臣に同情的ですが、大臣に問題が在るとするならば、それは記者の挑発にまんまと乗せられてしまった事にあります。
件の記者はネットの情報を見ると、所謂「左巻き」の方の様ですが、彼に掛かれば「何だって国が悪い」「個人の責任は無い」になってしまいます。報道関係にはその様な短絡的思考の方が大勢いらっしゃいますが、そんな記者の挑発に公の記者会見の場で乗ってしまった・・・。
復興大臣として、それなりに努力しているのにそれを否定されたのだから感情的になるのは理解できますが、そこを丁寧に煙に巻く力量が政治家には求められます。
ただ、私は大臣の人間味溢れる?マジ切れは嫌いではありません。
■ 記者とのやり取りより、大臣のネクタイが気になって仕方無かった ■
実はこの事件、私は報道を観ながら記者とのやり取りより、今村復興大臣のネクタイが気になった仕方ありませんでした。
あれ・・エヴァンゲリオンだよね・・・。
ネットで調べたら、福島のガイナックスを訪問した際にプレゼントされたとか・・・。
70歳の大臣が締めるには勇気の要るネクタイですが、エヴァネクタイをしていると多くの方が「それ何ですか?」と質問するのだそうです。
そこで、大臣は「福島にあるガイナックスさんから頂いた。ガイナックスさんは福島で頑張っていらっしゃる」的な事を答えられるそうです。
どうやら、このネクタイ、麻生財務大臣が羨んだそうで・・・このニュースをきっかけにきっとブレークします。値段は8千円以上とちょっとお高いですが・・・。
「自主避難者を自己責任とはケシカラン」とおっしゃるアタナ、是非、このネクタイを買って「福島支援アピール」に役立てられては如何でしょうか。
「・・・エーーこんな柄恥ずかしいくて絞められない。」ですって・・・。それでは大臣に気概で負けてますって・・・。
<追記>
当ブログは、ICRPの定める防護基準が厳しすぎる事で様々な問題と利権が生じていると主張し続けています。興味の有る方は「福島原発事故」のタグで過去記事をご覧になって下さい。