■ スプリントネクステルが15億ドルのジャンク債を発行 ■
ソフトバンクのお荷物となっている米携帯電話会社のスプリントネクステルが15億ドルのジャンク債を発行しました。金利は7.625%。
スプリントネクステルを買収するにあたり、孫社長はTモバイルとの合併によって、米携帯上位2社に追随する予定でしたが、米連邦通信委員会がこれを却下します。(通信事業の寡占を招くという理由)
これによって事業計画が大きく狂ってしまったスプリントネクステルの買収ですが、ソフトバンクの資金注入によって地道に通信設備を更新し、顧客を必死に引き留めて来ました。しかし、その間にTモバイルにもシェアで抜かれ、全米4位の座に甘んじています。
スプリントネクステルは再度TモバイルUSとの合併を試みていた様ですが、これも実現していません。トランプ大統領就任直後に、8兆円ファンドの資金をアメリカに投資するというお土産を持ってはせ参じた孫氏ですが、見えない壁に阻まれている様です。
スプリントネクステルの経営状態も良好とは言えない様で、携帯事業がお金を生み出せなず、フリーキャッシュフローが不足する中でのジャンク債の発行となった様です。
■ 通信とメディアが統合し始めたアメリカ ■
アメリカでは現在、携帯(通信)会社とメディア企業の統合が進んでいます。この背景は携帯電話通信の高速化と大容量化という技術革新を抜きに語る事は出来ません。
現在の携帯電話の通信規格は4Gと呼ばれる3.5Gbps(1秒間に最大3.5ギガバイトのデータ送信が可能)程度の通信速度を有していますが、5Gが普及すると10Gbpsまで拡大されます。さらに同時の利用できる回線数も大幅に増える為、携帯電話を使った通信のデータ容量が大幅に拡大します。
現在は「定額制」でチビチビと節約しながら使っている容量を、ほぼ無制限に利用出来る様になり、通信速度も現在の2倍以上になると、携帯電話やスマートフォンの役割自体が変わる可能性が指摘されています。
現在のスマートホンは「性能の低い小型ネット端末」に過ぎません。一方デスクトップに代表されるPCは、通信速度10Gbpsの高速光回線インターネットの恩恵によって、ストレスフリーでハイビジョン画質の映像をネットで観る事が出来ます。amazon primeビデオのサービスなどがこれに当たります。
仮に5Gのサービスが容量制限無く提供されるならば、現在の家庭で提供されている有線のネット環境が、携帯電話のサービスで受けられる事になります。これにより、「放送サービス」を丸々「通信サービス」に乗せる事も可能になります。「放送」が「配信」される時代が到来するのです。
この流れを受けて、アメリカではメディア企業と携帯電話会社の統合が始まっています。AT&Tはアイムワーナーを手に入れ、ベライゾンはAOLとヤフーを手に入れています。携帯電話各社は「メディア企業」へと進化を遂げようとしています。
■ サービスの質の向上の為には巨額の投資が必用とされる携帯電話 ■
但し、これには巨額な投資を必用とします。携帯電話の基地局は通信速度高速化の為に絶え間ざる設備投資を必要が必用です。
携帯電話会社を利用者が選択する場合、次の条件を満たす必要があります。
1) どこでも繋がる
2) 高速通信が安定して使える
3) 料金が安い
4) 豊富なコンテンツが楽しめる
2)~3)の条件を満たす為には、高速通信に対応した基地局を利用者の居る地域に「広範」に「くまなく」設置する必要が有ります。
この巨額の投資に見合う利益を得る為には、多くのユーザーを抱え込む必要に迫られます。携帯電話のサービスはスケールメリットの効果が高いのです。
アメリカでは首位のAT&Tとベライゾンの2強は投資効率が良く、3位のTモバイルUSや4位のスプリントネクステルでは、投資効率が低くなり「儲け」が少なくなります。
■ 経営再建がなかなか達成されないスプリントネクステル ■
孫社長のスプリントネクステル社買収計画には、最初からTモバイルUSとの合併によるスケールメリットの拡大が前提条件でした。これが実現しない以上、スプリントネクステル社への投資は砂にしみ込む水のごとく設備投資に消えて行き、利益を上げる事が出来ません。
昨年の合併交渉では、経営権を巡りTモバイルUSの親会社のドイツテレコムが難色を示した様ですが、経営が苦しいのはTモバイルUSも同様です。米政府や米連邦通信委員会が邪魔をしなければ、この2社は何れ合併して上位2社と共にメディア企業への道を歩むでしょう。
未だのソフトバンクのお荷物となっているスプリントネクステル社ですが、孫社長は将来の利益を確信しているのでしょう。それまでは、スプリントネクステル社はジャンク債を発行してでも、通信設備の更新を続ける必要があるのです。
書いているうちに、めずらしく孫社長やスプリント社を応援したくなりました。