2年半振りの本公演だ。初心に戻り、今、自分たちがここにいるということ、ただそれだけのことを2時間15分の大作として描く。作、演出の梶原俊治さんは虚構パーティーのころから、一貫して変わることのない自らのスタイルに固執する。それは芝居を1本の ストーリーとして語るのではなく、シチュエーションの中でのドラマが、内面世界を象徴させながら展開する、というスタイルである。自由自在にテーマが流れていく。意識の . . . 本文を読む
父と娘の物語だ。父はたったひとりで北京から娘が暮らすアメリカにやってくる。妻を亡くし、身寄りは娘だけだ。だが、娘はもう中国に帰ってくるつもりはない。彼は異国の地でひとり生きる娘のことが心配でならない。だが、その実は、自分の寂しさを紛らわすために娘の心配をしているようにも見える。
アメリカで暮らす娘は幸せそうには見えない。夫と離婚して、今ではひとり。恋人はいるようだが、その男はロシア人で、妻子 . . . 本文を読む
往来にとっては、この手の翻訳ものは得意分野だろう。安心して見ていられる。休憩を間に挟んで2時間30分の長尺だが、いつものことだから、驚かない。芝居のテンポは正直言うと、少しのろすぎてちょっと退屈はするが、年配の観客や、ふだんはあまり芝居を見ない人にとってはこのくらいがちょうどよいのではないか。
こういうちゃんとした芝居も世の中には確かに必要だと思う。僕は(これも正直言うと)あまり得意ではない . . . 本文を読む
人工衛星に乗って地球を回るライカ犬の話、というと、すぐにラッセ・ハルストレムの最高傑作『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が頭に浮かぶ。あの悲惨な少年の愛おしい物語は生涯忘れることはない。
なぜかこの芝居の山本正典さんがあの映画の主人公と重なる。この芝居のサラム(山本)とナビス(原聡子)は、あの映画のイングマルと、少年のような美少女サガのようだ。無邪気に遊ぶ彼らの姿は、不幸な少年時代を駆け抜けて . . . 本文を読む
ようやくこの大作を見ることが出来た。渡辺謙が全力を傾けて挑んだひとりの企業戦士のドラマは60年代から80年代という時代を背景にして、今を生きる我々に、過去の歴史の物語ではなく今を生きるための物語として強い意志を突きつけてくる。日航機墜落事故を中心に据えて、事故そのものではなく、日本という国が何を犠牲にして、どこにむかって生きてきたのかを突き詰めてくる。
冒頭のハンティングのシーン(象を撃つ) . . . 本文を読む