これは一人の少女の頭の中にある現実と妄想がごちゃごちゃになった世界だ。山本正典さんが作り上げるこの倉庫の中のワンダーランドは、5歳の少女が、父親(と、本人が思っているだけで根拠はない)に誘拐されて身代金として母親が3億円の代わりに少女が大事にしていた人形を持ってくる、という事件を中心にして、展開する。こんなありえない話が、高校2年生になった現在の少女の脳内宇宙で繰り広げられていかれることになる。 . . . 本文を読む
なんだかとても暖かい気分にしてくれる。こんなにも優しいトラパンって初めてではないか。ナカタさんがとても静かでおとなしい女性を演じている。感情が先に表に出て溢れてしまうような女性を演じることが多かったので、意外な感じだ。情緒不安定でエキセントリックという印象が、僕の中では彼女の定番だったが、今回は最後まで静謐を湛えたままだ。自分の置かれた状況をきちんと受け止めて、ここにいる。そんな彼女が見ていてと . . . 本文を読む
監督は『π』のダーレン・アロノフスキーだ。映像派の彼がこんな正統的の人間ドラマを監督するだなんてそれだけで驚きだ。前半の痛ましいばかりのプロレス・シーンの凄惨さには目を覆う。目をそむけたくなる。だが、あのえぐさがなくてはこれはただの綺麗ごとの映画にしかならない。そこを踏まえてこのいささか紋切り型の映画は、作られる。
過去の栄光にいつまでもすがりついているわけではない。彼にはこれしかできないの . . . 本文を読む
昨年公開されたすべての映画のなかで、一番感動的な作品は、きっとこの映画だろう。ようやくDVDで見ることができたのだが、こんなにも胸が熱くなる映画だとは思いもしなかった。たった90分のドキュメンタリードラマなのだが、ここには人生における最大の夢と冒険が詰まっている。
1974年、ワールドトレードセンターの2つのビルの間にワイアーロープを渡して、そこを歩いた男がいた。110階の屋上、地上440メ . . . 本文を読む