THE・ガジラの鐘下辰男の作品を武藤豊博さんの演出で贈る。昨年の『温室の花』も落ち着いたタッチの慎ましい作品で、劇団大阪の演出家として、あれはとても好ましい作品になっていたのではないか、と思ったが、今回は前作以上に武藤さんの想いが前面に出た作品で、興味深く見ることが出来た。2時間20分の大作である。舞台美術は素晴らしい。さすが老舗劇団だ。こういうちゃんと作りこんだ空間で演じられることは若い役者た . . . 本文を読む
まだベルリンに壁があった時代。1980年。あと9年で壁がなくなるなんて、誰もがまだ知らなかった時代の話。ある女医が東ベルリンからその村にやってくる。説明のないまま話が進行していくから、最初は何が何だか分からないままだ。ただ、彼女の行動を見守ることになる。せりふもほとんどない。自転車に乗り、病院と自分の住む部屋を往復する。部屋にはほとんど何もない。生活の形跡すら感じられない。そこはただ、寝るだけの . . . 本文を読む
『ランチのアッコちゃん』で衝撃を受けた柚木麻子のそれまでの作品を読むことにした。というか、たまたま図書館にこの本があっただけ。本屋大賞ノミネート作家特集なんていう企画で、立てかけてあったから手にしただけなのだが。
でも、彼女がおもしろいのは、これで確定的になった。今回も食を巡るお話にもなっていて、それってこの作家の武器なのだな、と思う。でも、それはあくまでも武器であって実力はそれだけではない . . . 本文を読む