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映画・演劇のレビュー

村上春樹『ラオスにいったい何があるというんですか?』

2016-02-02 22:11:37 | その他
久々の紀行文集。雑多な原稿を並べてある。でも、そこがとてもいい。旅をするとき、系統立ててする、なんていうのはない。行くところも、時期も、メンバーも、目的も、さまざまなものだろう。もちろん、彼の場合は仕事として、ということも多々あるはず。この原稿を書くことが目的で旅に出る、というのも。でも、基本的に、書きためたものを一冊にした、だけで特にそれ以外の意図はない。そういうのも、なんだかいいなぁ、と思う。タイトルを見て最初は、「今回の本はアジア方面への旅なのか、」と思ったけど、そうじゃないし。
ラオスにも行ったけど、アジアはそこだけで、アメリカ、ヨーロツパ、日本も、という布陣。なんでもありだ。あとがきにもあるが、0年代以降に書かれた少ない紀行文がそれなりの量になったから、という理由らしい。

ラオス行きの途上、中継地であるハノイで、「なぜ、わざわざラオスなんかに行くのか」と聞かれたことが、この書名の由来となったらしい。確かにラオスなんて、と思う気持ちはよくわかる。聞いた人は「ベトナムでいいじゃないか、」と思ったのだろう。でも、村上春樹はいう。「なんだか、よくわからないけど、ラオスなんです」と。ラオスに行って何をしたいとか、いうのではなく、でも、きっと行くと「何かがある」だろうから、それと出会うため、と。(確か、そんな感じのことを言っていたような)

そんなぁ、と思う人も確かにいるだろう。でも、僕はその気持ちがとてもよくわかる気がする。旅ではなく「旅行」と春樹氏は書いていた。カッコつけて「旅」なんて言わない。そんな細かいところも、なんだかいいなぁ、と感心した。そこに何があるかなんてわからないけど、なんとなく行ってみたいと、思う。だから、えいやぁ、と行く。そんな旅が好き。

村上春樹は今回、自分が住んでいた場所を訪ねる。イタリアやボストン。そして、アイスランドは[「世界作家会議」みたいなもの]、に招かれたから。そんなこんなの旅のエッセイ集だ。

僕は行く前に自分が行くところのなんの情報も仕入れない。飛行機の中で初めて本格的に今から行く場所について調べる。そうかぁ、こんなところに行くのか、と。(でも、図書館で借りてきた『地球の歩き方』はいつも間違った情報ばかりで、驚かされるけど)その瞬間が好き。泊るホテルは確保してくれるけど、その後の予定はその日の前日に決める。なんだか、いいかげんだけど、そのくらいの緩さがいい。

ラオスには行かないけど(たぶん)でも、とても楽しそうだ。この本を読みながら、好きにすればいい、と改めて思う。形に囚われない旅。それはその人に生き方にもつながる。

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