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映画・演劇のレビュー

劇団ひまわり『チルドレンズ いっぱいの愛をこめて』

2015-04-10 22:23:03 | 演劇
教育活動の一環としての演劇には興味があるので、劇団ひまわりによるこのタイプの[発表会]も時間の許す限り見させていただいている。幼少の子供たちから高校生、さらには大人まで含めて研修生たちが1本の作品にかかわる。自分たちが学んだことを1本の舞台作品の中でどう生かし、自分をしっかりとアピール出来るのかがここでは大切なのだろう。

総勢70名に及ぶキャストを抱え、(3プロ編成なので主要キャストはダブル、あるいはトリプルキャストにもなっている)1時間40分ほどの作品を作る。歌あり、ダンスありの華やかな作品なのだが(ダンス・スクールを舞台にしたお話)シンプルなお話を通して、生きていくことの困難と、大切なものは何かを問う。チラシには「5人の女の子と、ダンスの先生(日向薫が演じる)や高校教師、家族との対話から、表現すること、文化・芸術が人間の心の道徳観を高め、国作りの基礎のなることを伝える」とある。そんな壮大なテーマ、メッセージに向けて、お話は収斂されていく。

芝居自体は、単純すぎて、物足りないが、言わんとすることは、確かにきちんと伝わってくる。今回の演出は大阪俳優養成所の所長である木嶋茂雄さん。お約束がたくさんあり、たいへんだが、安心して見ることのできる作品として全体をちゃんと収めてくれる。

5人の女の子たちを中心に据え、彼女たちのそれぞれの抱える悩み、状況を踏まえて、未来へと前進していこうとする姿を描く。その中でも中心を紀子とつばさの2人に絞ったのは、正解だが、(5人の群像劇にするのには1時間40分という上演時間は少し短い)あまりにお決まりの設定とわざとらしい描き方は(特に説計過多の会話、さらにはつばさの両親の設定。コミカルに見せたかったのだろうが、あれは恥ずかしい)ちょっとなぁ、と思うけど、ドラマの作り方としては、確かにわかりやすいし、これはこれでこの手のパターンの王道だろう。

ただ、ラストは2人の対比をもっと明確に見せながら、そこから未来へとつながっていくものを、しっかりと見せて欲しかった。2人が同じようにダンスで世界に羽ばたくのではなく、それぞれのアプローチの差がどこにつながっていくのかも示したほうがいい。世の中には、いろんなケースがあるけど、誰もが自分の置かれた状況の中でベストを尽くす、という答えは悪くはないのだ。ハッピーエンドには異論はない。要はその示し方である。




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