習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ゲゲゲの鬼太郎』

2007-05-03 20:25:33 | 映画
 正直言って全然期待はしていなかったが、このあまりの企画のバカバカシさゆえ、怖いもの見たさもあって、見てしまった。原作は水木しげるの『墓場の鬼太郎』ではないし、子ども向きの娯楽映画だから、と、ちゃんと予防線も張って見に行ったのだが、やはりがっかりさせられた。

 仕方ないことだと思う。この映画には罪はない。鬼太郎が片目でないことや、夜のシーンが極端に少ないことやら、何より敵役の妖怪が弱いことやら、妖怪石を巡るエピソードのあまりの陳腐さ。挙げていけばきりがない。怒る気力はない。出るのはため息ばかり。どうして、こういう映画になったのだろうか。

 実写で鬼太郎をやることは、ある種の夢物語だ。しかも原作のあのキャラクターがこんなにもリアルに動き出すのだから、ファンは大喜びすることだろう。しかし、この映画のファンて一体誰だ?なんとなく客層が見えてこない映画である。誰に向けてこれは作られたんだろうか。

 塩田明彦監は、『どろろ』で原作を上手く自分の世界に取り込み独自の世界観を提起していたが、この鬼太郎にはそれがない。本木克英監督はこの映画で一体何をしたかったのだろうか。

 観客も監督も不在の映画って一体何?僕には理解出来ない。特にオリジナルキャラクターである少年とその姉が、ドラマを軟弱にしている。「子供だまし」なんていう映画ではもう死語となった言葉を思い出させるような設定だ。子供向けだから、主人公は子供にしよう、なんて考えがミエミエ。作者にはそんなつもりはないのかも知れないが、この映画には子供を登場させる意味はないし、特に少年の設定が最低。この子が妖怪石を隠し続ける意味がない。父親との約束とはいっても、ここまで鬼太郎に迷惑かけて平気でいられる神経がわからん。姉が病院からの電話で父の死を知り、確認にも行かないのも、異常だ。だいたい父親が妖怪石を盗むのも安直だし、そこから何もドラマが展開しないのも変だ。

 鬼太郎をウエンツ瑛士に演じさせ、青年に設定したんだから、せめて彼と少年の姉である実加(井上真央)との間に淡い恋心とかを描いたってよかったはず。原作離れはいいから、オリジナルストーリーとして、もう少し見せ場を設定して欲しかった。これでは話があまりにも詰まらなさすぎる。同じように子供を主人公とした妖怪映画でも、三池崇史の『妖怪大戦争』はもっと面白かった。

 田中麗奈の猫娘はキュートだし、大泉洋のねずみ男を始め、役者陣のなりきり演技とコスチュームは凄いだけに残念でならない。こんなに笑えるのにスター隠し芸大会レベルの映画にするのはあまりに惜しい。

 ウエンツ鬼太郎が、髪の毛を飛ばすと、禿になるという設定には大笑いした。それから、ねずみ男が何度もおならをするシーンがあり、幼児じゃないんだが、それには笑ってしまう。まぁ、その程度の映画です。

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1 コメント

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Unknown (キタモト)
2007-05-04 23:54:48
オリジナル鬼太郎も、禿になりますよ。
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