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映画・演劇のレビュー

『ウォンテッド』

2008-09-26 22:13:30 | 映画
 つまらなかったなら泣くぞ、と思いながらかなりドキドキして劇場に足を運んだ。『ナイト・ウォッチ』のロシア人監督のハリウッド進出第1作である。かなりぶっとんだ映画だという評判だった『ナイト・ウォッチ』にはがっかりさせられた。あんなにもド派手なアクションを見せながらもお話がよくわからないし、もたもたするからだんだん退屈してくる。せっかくの迫力映像が台無しだった。

 いくら凄い映像を見せようともお話がつまらなかったなら駄目なのだ。どこまでドキドキさせられるかは、それを支えるストーリーの力であろう。その点この監督は不安要素大有りだが、今回は成功している。ハリウッドのシステムと彼のエンタテインメント志向がうまく連動した。その結果、目を見張らされるような映像がよく出来た物語とマッチするという最高の形になる。

 それにしてもここまでド迫力の目も眩むようなアクションをよくぞ見せてくれた。これはCGによってどれだけ想像力を刺激するような体験を観客にさせれるか、その限界への挑戦である。驚きの映像は単なる視覚効果のことではない。技術なんかでは乗り越えられないイマジュネーションを喚起する仕掛けを提示できるかが問題なのだ。想像を絶する映像を息を飲むようなストーリー展開のもと、それを見せきれた時、その映画は確かなものとして成立する。

 これでもか、これでもか、とエスカレートするアクションはスペクタクルの限界を超えていく。考える暇も与えない。車や列車を使った迫力満点のアクションは僕らを異次元空間に突き落としてくれる。こういう方法があったのかと驚かされた。『インビジブル・ターゲット』に続いて、またもアクションの可能性を広げる画期的な映画の登場である。これはお金ばかりをつぎ込んでつまらないCGを見せる凡百のハリウッド映画とは違う。時間を作ってティムール・ベクマンベトフ監督の前作『デイ・ウォッチ』も一度見てみよう。面白いかもしれない。

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