とてもよくできた恋愛小説だとは思う。こういう上質の短編集に出会うと嬉しくなる、という人もたくさんいるかもしれない。だけど、僕はなんかあまりに上手すぎてそこが反対に不満だ。贅沢だと言われそうだが正直な感想なのだから仕方ない。
これって少し頭の中だけで作られすぎている気がする。小説ってもっと感情に迫ってくるものでなくてはらない。なのに、この作品は計算の上に成り立っている。それが伊坂幸太郎のように、最初からこれはパズルのように作ってありますよ、と宣言されたものならそのつもりで楽しめるけど、この作品は、最初はさりげなさを装っているだけに、最後まで読んだとき、なんか作為的なものが見えてきて、あまり後味がよろしくない。
5編とも同じような印象だ。良く出来た絵空事。きれいにオチが決まって気持ちいい、と思ったのは、『ラクガキをめぐる冒険』だが、あれは最初にオチ(5章から始まる)を持ってきて、そこに到るドラマとして構成したからではないか。いずれもオチが上手で、でも、そこが鼻につくのだ。人の気持ちってもっと複雑で、こんなにも簡単にうまくはおさまらない物だと思う。よく出来た小説というのは、その収まりの悪さも含めてきちんと納得させる力を持つ作品のことをいうのだろう。そういう意味で、中田永一は、まだまだである。
これって少し頭の中だけで作られすぎている気がする。小説ってもっと感情に迫ってくるものでなくてはらない。なのに、この作品は計算の上に成り立っている。それが伊坂幸太郎のように、最初からこれはパズルのように作ってありますよ、と宣言されたものならそのつもりで楽しめるけど、この作品は、最初はさりげなさを装っているだけに、最後まで読んだとき、なんか作為的なものが見えてきて、あまり後味がよろしくない。
5編とも同じような印象だ。良く出来た絵空事。きれいにオチが決まって気持ちいい、と思ったのは、『ラクガキをめぐる冒険』だが、あれは最初にオチ(5章から始まる)を持ってきて、そこに到るドラマとして構成したからではないか。いずれもオチが上手で、でも、そこが鼻につくのだ。人の気持ちってもっと複雑で、こんなにも簡単にうまくはおさまらない物だと思う。よく出来た小説というのは、その収まりの悪さも含めてきちんと納得させる力を持つ作品のことをいうのだろう。そういう意味で、中田永一は、まだまだである。