スタジオポノックの第一回作品。当然、ジブリの新作のような作品である。売り方も作り方も完コピしている。もちろん、米林宏昌監督は前2作同様、自分の世界観を貫いているだけのことだ。
『魔女の宅急便』と『千と千尋の神隠し』を混ぜて、『ハリーポッター』で味付けした。コンパクトで的を射た、とてもよく出来た作品になっている。ただ、こういう作り方ゆえ、新鮮味には欠けるのは仕方ないことだろう。安心して見ていられる。それが今回は一番大事なことだと思う。イメージとしてのジブリのエッセンスを総動員している。でも、軽くてサラリとした仕上がりなのは、米林作品の持ち味だろう。
前半、魔法学校に体験入学する部分も、いつ偽学生だと、ばれるのかとハラハラさせられるし、後半、ピーターを助けるためのバトルシーンは、とても感動的。要するに、いろんな意味でひねりのない素直な映画なのである。
この映画が前2作を超えて米林映画史上最大のヒットになればいいのだけど、どうなるのだろうか。公開3日目、TOHOシネマズ梅田の夜の回で見たのだけど、あまりお客さんは入ってなかった。あれだけの宣伝をしたのに、大丈夫か、と少し心配。観客のニーズは刻々と変化していて、何がヒットするか、わからないし、今はすぐに飽きられてしまうから不安だけど、良心的な作品だけに、もっとファミリー層にアピールして欲しい。
魔法の花を手に入れることでこの世界を支配しようとする魔女と博士の欲望って何なのか、をもう少し突っ込んで描けたなら、作品に深みが出たと思う。お金に目がくらんでしまう愚かな人間(魔女だけど)というわかりやすい図式はいいと思うのだ。そのために動物実験を繰り返し、たくさんの生き物を(最終的には、人間も含む)犠牲にする部分は、昨日まで読んできた宮内勝典『永遠の道は曲がりくねる』のラストに通じる。アメリカによる水爆実験の犠牲になったビキニ環礁の人たちの姿が重なる。さらには、この小説を読みながら、これも先日見たメル・ギブソン監督の『ハクソ-・リッジ』も思い出していた。あの沖縄戦のシーンだ。これらがなぜか、たまたま『メアリ』とつながっているって、いるって凄いな、と思う。戦争によって、平和に暮らしていた人たちが酷い目に遭うという図式が、このアニメ映画の根底にも流れている。彼らの実験の犠牲になり奇形動物に変態するというエピソードが、この映画の一番肝だ。それを人類の進化のため、とか言っているのは怖い。これは単純な映画のように見えて、感動的な少女の成長物語だけでは終わらない。