ウイングで貰ったチラシを見て、ちょっとこれは行きたいな、と思った。作、演出の福寿淳さんの文章もよかった。や乃えいじさんが主宰するボズトアールの公演で、ウイング乗打ち企画。突然スケジュールに割り込んできたし、「ボイスタレントプロダクション」の企画上演作品なので、あまり期待は出来ないけど、もしかしたら、と、ほんの「少し」期待もして、見に行く。
1時間の小さな作品である。最初はリーディング公演として企画されていたらしい。でも、福寿さんの鶴の一声(「みんな、台詞を覚えてこい!」)で、芝居として上演されることになったらしい。短い稽古期間で、たいへんだったようだ。そんな悪条件でも、みなさんとても健闘している。リーディングではなく、芝居でもない、なんだか不思議な感触の作品に仕上がった。
お話自体がとても、面白い。そこは期待通りだ。それをどれだけ印象深く描けるのかがポイントだが、きちんと作り込んだ芝居ではないから、難しい。お話を伝えるというレベルでなんとか形にするしかない。さらりとしたタッチで、この怪談もどきのお話を「いい話」として伝えるしかない。とてもリアルなお話とは言えないけど、少女(照子ちゃん)の一途な心情を伝えることに集約する。彼女の想いが、このありえない話にリアルを与える。下敷きになる『小栗判官伝説』をちゃんと説明で挿入するのも、この場合は悪くない。