毎回夏の7月に楽しい時間を見せてくれる(体験させてくれる)のがすかんぽ長屋だ。10年ほど続いたハレンチ・キャラメル散会後、神原さんは、すぐにこの「すかんぽ長屋」プロジェクトを立ち上げた。ほんとうに凄いフットワークの軽さだ。わざわざ僕がここで言うまでもないが、彼女は劇団浮狼舎、神原組を主宰している。ハレンチ・キャラメルとその後続であるこのすかんぽ長屋は島上亨(島上とおる名義)が座長であるが、実質は神原さんのユニットと呼んでいいだろう。メンバーは相棒の島上さんだけではなく、キャスト、スタッフも浮浪舎、神原組も同じだ。年に5回のペースで公演を打つ。こんな集団は他にない。(少なくとも関西には)
さて、この新作である。今回はなんだかしっとりした作品でいつもの過激さは控えめ。なんだかさらりとした感触の仕上がりなのだ。いつだってどこか過剰で、やりたい放題だから、こんなのはなんだかめずらしいことだ。でも、いつも通りのドタバタや立ち回りはちゃんとあるし、人もむやみやたらと無常に死ぬ。(これでなくては神原作品じゃない。)なのに、なんとなく控え目な印象を与えるのはなぜだろうか。
今回も当然、すかんぽ長屋を舞台にして安太郎(島上とおる)とその仲間たちが引き起こすドラマを描く連作だ。今回は「人魚と長寿の秘薬」が、お題。長屋の井戸周辺が舞台となる。場所の移動はない。狭いエリアでそこにやってくる長屋の住民と、人魚を求めてくる輩とのやり取りが描かれる。満を持して舞台中央に配された井戸から人魚が登場する。顔を出した愛澤アン演じる彼女の裸の肩から上が見えるシーンはなんだかドキドキする。セクシーだからではなく、きょとんとした彼女の表情との齟齬がおかしいからだ。
今回なんとあの関秀人さんがゲスト出演している。神原ワールドで彼を見るなんて、初めてではないか。彼がこの世界に違和感なく混じっている。塚本さんも久々に出演。楽しそう。かなりの大人数の芝居で、狭い舞台上でてんやわんやの騒動が展開する。それはお約束の70分の至福だ。