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映画・演劇のレビュー

『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』

2022-08-01 10:12:36 | 映画

このタイトルはダメだろ、と思う。これでは、人間の支配から解き放たれた恐竜たちがこの世界を支配する、というお話になると想像させるではないか。そんなとんでもないお話をどういうふうに展開させるのだろうか、と期待するとがっかりさせられる。嘘だし。これでは、ミスリードではなく羊頭狗肉だ。騙されたというしかない。まぁ、最初からこれは『猿の惑星』ではないのだから無理無理ではないか、とは思っていたけど、それにしても完結篇とは思えないほどに杜撰な映画だ。あきれる。

シリーズ6作目にして最悪の出来だろう。まず、お話がしょぼすぎる。あれもこれもと大風呂敷を広げて収拾がつかなくなりました、って感じ。これまでの博士たち総出演にしても、あれでは顔見世でしかないし、ストーリーにちゃんと組み入れられていない。あれではせっかく呼び寄せたのに豪華キャストが泣く。ハエ男なんか(すみません、ジェフ・ゴールドブラムさんです)見せ場もないし。

映画自体がただのアトラクションと化している。まぁ、最初からそのつもりで作っているのだろうけど、それにしてもこれはあんまりだ。2時間半の長尺は面白かったらまるで問題ないけど、なんだかダラダラした展開で締まりもない。クリス・プラットの話と、博士たちの話がちゃんと融合していかない台本にも問題があるのだろう。続々と登場する恐竜たちとの戦いは迫力満点で確かにアトラクションとしては及第点だろうが。アイマックス3DとかMX4Dとかいう姑息な仕掛けも援用して、映画館ではなく遊園地としてこれを楽しめばいいのかもしれない。

でもこれをスピルバーグが作った、というのはなんだかなぁ、である。ジョージ・ルーカスはちゃんと『スター・ウォーズ』から手を引いて、今のあれは自分の映画ではないと明言している(たぶん)。でも、スピルバーグは違う。製作総指揮に名を連ねる以上、監督はしていなくてもこれはスピルバーグ印の映画だと理解していいはずだ。それにしては納得がいかない出来ではないか。

最初の『ジュラシック・パーク』の感動と興奮はリアルな恐竜を登場させた映画だった、という1点に尽きるわけではない。あの驚きは映画としての完成度に裏打ちされていたからだ。あの映画はアトラクションではない。だけど、今回は明らかにただのアトラクションだ。ここには映画としてのドラマはない。だから2時間半は長い。(ユニバーサルスタジオの『ジュラシック・パーク』ライドはせいぜい5,6分の急流すべりアトラクションだし。)ここにどれだけリアルな恐竜が出てきてもリアルな人間ドラマのないこの映画はただの見世物でしかない。


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