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映画・演劇のレビュー

Gフォレスタ『殺意と憧れのあいだ』

2013-06-25 22:27:52 | 演劇
 1920年代を舞台にしたミステリー。丸尾さんお得意のエンタメ芝居なのだが、実はそれだけではない。これは久々に震災を扱った作品なのである。阪神大震災の直後真正面から自分たちの問題として震災を取り上げた彼が今再び震災に挑む。しかも、今回はミステリーという今のGフォレスタ定番スタイルの中で、エンタメ作品として提示するのだ。今の自分のフィールドでの様々なアプローチのもと、それを見せようとする。

 1926年、関東大震災から3年後、震災ですべてを失ってしまった男が主人公。2つの殺人事件を巡る人間模様。事件を追う刑事。彼らの住む町。世界をそこに限定して見せる。みんながみんな自分の心のバランスを壊してしまって、それでも何かにしがみついて生きている。

 けれん味たっぷりの芝居。大仰な演技とわざとらしい展開。この嘘臭さは実はわざとだろう。フィクションであることを大前提にして、ここに起きた殺人自身が大事なのではなく、それをきっかけにして、心を壊してしまったしまった人たちのその心の葛藤をドラマ化しようとしたのだ。これは彼らの心象風景だったのだ、と理解すれば納得がいく。ここではお話としての整合性よりも、彼らの心の震え、おびえ、を描くことが先行する。それでいい。

 とても丁寧に作りこまれた煉瓦造りの建物を中心とした迷路のような町のセットの前で右往左往する人たちの姿が描かれる。そこでお話は展開する。室内のシーンは警察だけで、それ以外は建物の外である。それってさすがにちょっと不自然なのだが、そんなことすら含めて、この芝居が彼らの心の闇の中のドラマなのだと理解するといい。この町そのものがこの芝居の舞台なのだ。


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