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映画・演劇のレビュー

『ザ・ウォーカー』

2010-07-12 22:32:53 | 映画
 (承前)それに対して『ザ・ウォーカー』は全く同じ設定のドラマなのに、ここには感動がない。寡黙な主人公は1冊の本を届けるために旅を続ける。西を目指してどこまでも行く。『ザ・ロード』と同じようにいくつものサバイバルを乗り越えて行くのだが、こちらの主人公デンゼル・ワシントンはヒーローだ。めちゃ強い。だが、こちらの敵も強い。ゲイリー・オールドマン率いる強烈な面々だ。と、いうことで、アクションはド派手なものになる。旅を続けていたはずなのに、こちらの映画は途中からはある場所からあまり動かないでドラマが展開する。この方がわかりやすいし、ドラマが作りやすいからだ。

 どちらの映画にも人肉を食う人々が登場する。極限状況では人肉を食べることもやむなし、と認めている。もちろん主人公たちはどちらの映画でも食べたりはしない。さらにどちらの映画も主人公は海を目指す。そこにゴールがあるかのようだ。

 アルカトラズ島へ行き、バイブルを届けるというこの映画のオチはつまらない。世界の再生の足がかりはバイブルにある、というのはキリスト教社会に於いては当然のことかもしれないが、僕たち日本人にはピンとこない。こういう映画を続けて見ると、なんだか『マッドマックス』の時代が再びやってきたみたいだ。でも、あの時のようなノーテンキさはここにはもうない。

 それにしてもゲイリー・オールドマンはなんであんなに「本」にこだわったのだろうか。そこがまるでわからないから、この映画はつまらないのだ。30年間「本」を運ぶ旅人デンゼル・ワシントンの使命感もいまいち伝わらない。聖書というオチに納得しないからだけではあるまい。彼のこだわりも伝わらないからだ。その結果、まるでこだわりのない映画になってしまった。それではつまらないのは当然だろう。『座頭市』だなんていうのも、なんだかなぁ、だ。


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