![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/50/6fc1cd02532ab7ab07d136dd20b9d762.jpg)
演出をエイチエムピーシアターカンパニーの笠井さんが手掛けるというので見に行くことにした。もちろんこれは何度となく舞台化されてきた大竹野正典の傑作戯曲作品だ。近大の学生たちが大竹野作品に挑むなんて、何だかそれだけでとても嬉しい。
彼らにとっては全く未知の作家の世界を笠井さんの指導のもと作る。大竹野戯曲を体験することで、それを内在化することができるのか。そんなことも興味深い。
これは上手く演じるだけでは成立しない芝居であると改めて知る。前半はかなり苦しい。作品世界を体現しきれない。これは役者の力量が問われる芝居である。若い学生たちには荷が重い。主人公のヨシダの狂気を演じる上村しずく以下4人は描ききれない。
だが後半、次第に彼女たちの作る世界は形を成していく。こういう『夜、ナク、鳥』もありか、と思った。ただ周囲を彩る男たち4人は残念だが、主人公の4人を支えきれない。学生の男女比から女性が男を演じなくてはならないのは可哀想だった。
わけのわからない混沌が彼女たちを支配する。ヨシダという女に導かれて3人は看護婦という自らのスキルを生かし殺人を繰り返す。破滅への道を転げ落ちる。お金はきっかけでしかない。生きるために殺す。殺された男たちはくだらない奴ばかりで死ぬことでなんとか責務を果たすことになる。
あり得ない理屈が彼女たちを突き動かしていく。それは生存本能なのか。終盤のタザワの死から,一気にゴウを殺すことへと傾れ込む展開はこの戯曲の肝であり、見せ場であろう。ここに来て、ようやく4人のチームはなかなかいい味を出した。
今までさまざまな集団によるこの戯曲を見てきたが、改めてこれはやりがいのある作品であり、難しい作品だなと実感した。