13年間姿をくらまし行方知らずだった父親の葬式の場面から始まる。余命わずかで帰ってきて、数か月後に死んでいった。どうしようもない父親。そんな彼に接したふたりの息子と妻。借金だらけで、家計は火の車。借金取りがやってきて居留守を使う。そんな日々だった。13年後、大人になった兄弟は父を受け入れるのか。妻であった母はどうするのか。冒頭の葬儀のシーンの侘しさ。参列者はほとんどいない。身内は兄弟と弟の恋人だけ。母親は来ていない。
回想で子供の頃の話が挟まれていく。70分という、劇場用映画としては実に短い映画だ。無駄なシーンは一切ない。だけど、もう少し必要なシーンがあったのではないか、とも思わせる。何か、もの足りない。これを劇場で見ていたら、そのあまりのあっけなさに少し腹が立ったかもしれない。これは短編映画のボリュームなのだ。30分の作品ならこれでも満足するけど、長編映画としてはしんどい。
それから、映画の後半、葬儀の席で少ない参列者がそれぞれの死者への想いを語るシーンはなんだか嘘くさくてついていけない。だけど、そこに込めた作り手である齊藤工監督の気持ちはわからないでもない。リリーフランキー演じるどうしようもない父親が、どんな人間だったのか、その家族には見せなかった側面がそこには描かれる。でも、映画としてはこの肝の部分で滑っている。
主要キャストは、5人のみ。兄弟を演じたのは主人公である弟を高橋一生と、兄を監督でもある斎藤工。葬儀にいけない母親(神野三鈴)や、高橋の恋人(松岡茉優)の4人とリリー・フランキーの父親。とても小さな映画。彼ら5人だけの話でよかったのではないか。