芝居を見てから既に一週間が過ぎた。忙しくて書く暇がなかったのだが、本当はすぐにでも書きたかった。最近見た中で一番気合いの入った芝居である。こういう芝居が見たかったのだ。思いのたけを全てぶつけるような、玉砕覚悟の芝居だ。
上演時間2時間45分。これでもか、これでもかと自らのイメージを展開していく。この上演時間は作、演出の池川辰哉さんにとっては短すぎるのだ。完成台本はこれを遥かに超える長さだったらしい。それを短くするため、ギリギリまで、カットして、その結果この上演時間である。
見ていて次から次へと彼の世界が広がっていく。そのさまは圧巻である。話を広げ過ぎたから、だんだん収集がつかなくなり、まとまりに欠ける作品になった気がしないではない。だが、そんなことあまり関係ない。へんにまとめてつまらないオチに収斂させる愚を犯すことなく、自分の世界を大切にして、混沌の中に埋もれてしまうくらいの覚悟があったほうが、潔い。だいたいこの芝居には無駄なシーンはないのだ。それも凄い。ここにあるのは彼にとって必要な場面ばかりであり、ここに詰め込まれたアイデアとそのイメージは次回作のために取り残しておくような性質のものではない。今、このテーマのもと、どうしても必要なのである。
話は、最初提示した「ニートの青年の見た妄想」というパッケージングから、どんどん逸脱していく。だが、それは無意味な寄り道ではない。
左手の誘惑に導かれて、幻の町を旅する。そこは、かって彼が暮らした町だ。しかし、今では寂れてしまって、灰色の町となっている。風が吹く町、風吹町。4人の幼なじみたち。電器屋。洋品店、豆腐屋、さかな屋。彼らはこの町の活性化を望んでいる。かっての商店街の輝きを取り戻したいと願う。そこは、今ではシャッターが閉まった人通りもない寂れた場所と化している。
かって、彼の左手は野球部のエースだったオサムの球を受けていた。行方不明のオサムを捜して風吹町へ。そこで彼は面影となったオサムと出会う。真っ黒の影でしかない「面影オサム」はこの寂れた町の再生を掲げて町長選に立候補する。電器屋を参謀にして当選した彼は、さらには周囲の町まで合併して、市長となり、駅前の再開発に乗り出す。巨大なショッピングモールを作る。それは結果的に商店街の息の根を止めることになる。
彼の唯一のファンと名乗る女は見えない目で、ここが灰色の町と化すのを止めて欲しいと言う。幻の空き地でキャッチボールをするために彼は走り出す。
ストーリーももちろん面白いし、描きたいことがストレートに伝わってくるのも心地よい。これだけの長尺なのに飽きさせない。かなりのストーリーテラーだ。若い情熱がこの作品をこれだけのものにしたのだろう。ここまで読んで貰ったならよくわかるだろうが、これは典型的なアングラ芝居である。唐十郎や内藤裕敬の影響をしっかり受け継いだ今時めずらしい集団だ。しかも、それをアングラもどきとするのではなく、自分のスタイルとして、定着させてある。
何も出来ない引き籠りの青年の見た幻想の物語が、新しい希望の突破口を切り開く。ストレートで熱い。感動的な芝居である。
上演時間2時間45分。これでもか、これでもかと自らのイメージを展開していく。この上演時間は作、演出の池川辰哉さんにとっては短すぎるのだ。完成台本はこれを遥かに超える長さだったらしい。それを短くするため、ギリギリまで、カットして、その結果この上演時間である。
見ていて次から次へと彼の世界が広がっていく。そのさまは圧巻である。話を広げ過ぎたから、だんだん収集がつかなくなり、まとまりに欠ける作品になった気がしないではない。だが、そんなことあまり関係ない。へんにまとめてつまらないオチに収斂させる愚を犯すことなく、自分の世界を大切にして、混沌の中に埋もれてしまうくらいの覚悟があったほうが、潔い。だいたいこの芝居には無駄なシーンはないのだ。それも凄い。ここにあるのは彼にとって必要な場面ばかりであり、ここに詰め込まれたアイデアとそのイメージは次回作のために取り残しておくような性質のものではない。今、このテーマのもと、どうしても必要なのである。
話は、最初提示した「ニートの青年の見た妄想」というパッケージングから、どんどん逸脱していく。だが、それは無意味な寄り道ではない。
左手の誘惑に導かれて、幻の町を旅する。そこは、かって彼が暮らした町だ。しかし、今では寂れてしまって、灰色の町となっている。風が吹く町、風吹町。4人の幼なじみたち。電器屋。洋品店、豆腐屋、さかな屋。彼らはこの町の活性化を望んでいる。かっての商店街の輝きを取り戻したいと願う。そこは、今ではシャッターが閉まった人通りもない寂れた場所と化している。
かって、彼の左手は野球部のエースだったオサムの球を受けていた。行方不明のオサムを捜して風吹町へ。そこで彼は面影となったオサムと出会う。真っ黒の影でしかない「面影オサム」はこの寂れた町の再生を掲げて町長選に立候補する。電器屋を参謀にして当選した彼は、さらには周囲の町まで合併して、市長となり、駅前の再開発に乗り出す。巨大なショッピングモールを作る。それは結果的に商店街の息の根を止めることになる。
彼の唯一のファンと名乗る女は見えない目で、ここが灰色の町と化すのを止めて欲しいと言う。幻の空き地でキャッチボールをするために彼は走り出す。
ストーリーももちろん面白いし、描きたいことがストレートに伝わってくるのも心地よい。これだけの長尺なのに飽きさせない。かなりのストーリーテラーだ。若い情熱がこの作品をこれだけのものにしたのだろう。ここまで読んで貰ったならよくわかるだろうが、これは典型的なアングラ芝居である。唐十郎や内藤裕敬の影響をしっかり受け継いだ今時めずらしい集団だ。しかも、それをアングラもどきとするのではなく、自分のスタイルとして、定着させてある。
何も出来ない引き籠りの青年の見た幻想の物語が、新しい希望の突破口を切り開く。ストレートで熱い。感動的な芝居である。
HPFや旗揚げから観ていただきありがとうございます。
また励みに頑張って行こうと思います。
ありがとうございました。