80年代に一世を風靡したシティポップ小説。おしゃれな都市小説は時代に受け入れられて、やがて飽きられて消えて行った。軽やかで優しい夢のような時間。だけど夢はやがて醒める。作家で学者でもあり、あの時代を牽引したひとりでもある平中悠一があの時代を振り返り検証する。
まず片岡義男や山川健一。そして懐かしい川西蘭や原田宗典。銀色夏生の本はどこの書店に山盛り並んでいた。だけどなぜか今ではあまり顧みられない。ここに沢野ひとしが取り上げられたのは意外だが、まぁ、わからないではない。そしてここには取り上げられないけど村上春樹がいた。というか、彼はずっと第一線にいるけど。
川西蘭の『マイ・シュガー・ベイブ』を読みながら、これはまるで村上春樹だな、と思った。ふたりが似ているのではなく、あの時代の気分が共通しているのだろう。
久しぶりに読む平中悠一はつまらなかった。ライナーノーツの評論はなかなか面白いけど。80年代を風靡した都市小説はやはり一過性のものでしかない。あんなに面白いと思った山川健一や原田宗典はつまらない。(今回取り上げた作品のせいか?)最後に再び収録されている片岡義男もあまりピンとこなかった。