戦場になった村。みんな逃げ出してもう誰も住んでいない。今はとても静かだ。だけど、すぐそこで殺し合いが行われている。男はそんなところで黙々と木箱を作っている。みかんを入れるための箱だと、やがてわかる。冒頭のシーンからこの映画は傑作だとわかる。作業場で、電気のこぎりで木を切る姿を捉える。その真剣な表情を見ているだけで、緊張が伝わってくるからだ。やがて、もうひとりの男が登場する。彼はみかんの収穫をしている。だが人手がなくて、このままでは腐らせてしまう。なんとかしたいが難しい。出荷してお金に換えたいのは当然なのだが、それだけではない。今は、静かだけど、いつ再び戦火がここに及ぶか、わからない。
みかんを入れる木箱を作る男と、みかんをもぎ取って出荷しようとしている男。そんなふたりのもとに、戦闘で瀕死の2人の男がやってくる。彼らはお互い敵同士。そんなふたりの治療をしながら、(やがて回復した両者は同じ家で今にも殺し合いを始めようとする。)4人のドラマが展開していく。
戦争というものの意味を教えてくれる。久々に心震える映画を見た。(この映画を見た後、同じように心を震えさせる映画である『わたしたち』を見た。)
たった87分の短い映画なのに、ここには真実がある。静けさと諦め。いろんなことを受け入れるしかない。ここには拒絶という選択肢はない。