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映画・演劇のレビュー

白岩玄『世界のすべてのさよなら』

2017-10-18 21:00:18 | その他

 

30歳を目前にした4人の男女の憂鬱。大学時代の同級生で仲良しだった4人組は今も変わらず、つるんでいる。男3人女1人というバランスのよさ(それとも、わるさ)。恋人にはならない。友情で結ばれている。でも、実は危うい。美術系の大学を卒業し、絵を描くことの周辺で仕事したいと思うけど、なかなか上手くはいかない。一応、デザイナーや画家をしている。でも、満足はしてない。

 

四章からなる。各章は4人を主人公にした話だ。それぞれが抱える問題を、他の仲間との関わりの中で描く。結婚を機にシェアしていた部屋を出て行く。遠距離恋愛のつれない恋人と別れる。画家といいつつも、仕事のないフリーターのような存在。心を病んで、転職した。それぞれ4人には4人なりのストーリーがあるけど、大事なことはそこではない。

 

今までの幸せだった時間に終わりが来ていて、みんながバラバラになっていくという予感の中で、それをちゃんと受け入れて、新しい一歩を踏み出そうとする。30歳になってようやく大人になろうとしている。そんな彼らのお話だ。甘い話になりそうなところだが、そうはならない。

 

4人で集まり飲み会をする。学生時代から変わらない習慣。でも、それがだんだん難しくなる。忙しさとかではない。気持ちの問題なのだ。微妙なすれ違いが生じつつある。昔のようにはいかない。「何か」が変わりつつある。それを上手く言うことは出来ない。自分たちにもよくわからないものだ。そんな気分をこの小説は捉えていこうとする。その危うさがとてもドキドキさせる。この緊張感と静けさが魅力的だった。

 


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