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映画・演劇のレビュー

2012 映画ベストテン

2013-01-03 23:08:30 | 映画
 劇場で見た映画の本数は138本。昨年よりかなり増えた。というか、昨年の僕はあまりに映画を見なさすぎた。この35年でいちばん少ない本数しか見なかった年だったのだ。20代の前半には300本位見ていた時もあったけど、今は150本くらいが限界だ。芝居を見なければもっと映画を見れるのだが、それもなぁ、と思う。

 ということで、映画も芝居と同じで10本だけ、リストアップする。2012年も面白い映画はたくさんあった。そんな中で厳選して2012年を代表する特別の作品である。



   1位 『星空』
   2位 『ダークナイト・ライジング』
   3位 『天地明察』
   4位 『ポエトリー アグネスの詩』
   5位 『セデック・バレ 太陽旗』
   6位 『桃さんのしあわせ』
   7位 『夢売るふたり』
   8位 『僕等がいた』
   9位 『007 スカイフォール』
   10位 『僕達急行』


 かなり意図的な選択をした。昨年の劇場公開作品であることを象徴する作品と、もちろん僕の個人的な趣味を絡ませての選択だ。日本映画と外国映画を半々にした。でも、最後でわざと4対6に変更した。9位の『スカイフォール』を割り込ませた。007の映画をベストテンに入れるなんて普通ならありえない話だが、この作品の完成度の高さは特筆に値する。全体をできるだけバラエティに富ませた。アート映画ではなく、娯楽映画を重視した。でも、単純な娯楽大作ではない。エンタメであるだけでなく、それ以上の『何か』を孕む作品ばかりだ。

 このベストテンには『僕等がいた』なんていう少女漫画の映画化作品もある。でも、見た人ならわかるはずだが、あの作品は安直な少女趣味ではない。特に前半の『前篇』がすばらしい。まるで傾向の違う映画だが、同じように前篇がすばらしかったのが、『セデック・バレ』だ。これも2部作の超大作なのだが、後半になると急につまらなくなる。ドキドキさせる予感の前半以上のものを後半は描けなかったからだ。この映画は今年、日本でも劇場公開されるようだ。ぜひ、見て欲しい。

 絵本の映画化(原作絵本がまた、素晴らしい!)である台湾映画『星空』も、一見少女趣味の青春映画にも見えるが、これも、そうではない。少年と少女の旅を描くこの作品が、日本では劇場公開されないのは、残念でならないが、こんなにも素敵な作品をみんなに見せるのはもったいないから、僕が一人占めする。(大阪アジアン映画祭で2回だけ上映された)
 

 バットマンの完結編である『ダークナイト・ライジング』がいかに凄かったかは、もう語る迄もない。『ダークナイト』と比較して今回はダメだ、なんて意見もあるが、僕はそうは思わない。そりゃぁ、幾つも問題点はある。お話にも破綻があるのは認める。だが、この現代の黙示録が指し示すものの前では、そんなこと、ささいなことだ。闇の世界がこの世界を覆い尽くす。その時、我々に何が出来るのか。『「バットマン」に象徴させるもの』その大きさに圧倒される。これは今あるこの世界とどう向き合うのか、が描かれる映画なのだ。前作に勝るとも劣らない。

 2012年最大の不幸は、森田芳光が死んでしまったことだ。(亡くなったのは2011年12月だが)もう彼の映画が見られない。2012年公開3月となったこの『僕達急行』が遺作となったのは、悲しいけど、遺作がこんなにも明るくて彼らしい作品だったのは、不幸中の幸いだ、と思いたい。彼はデビューからずっと時代の最先端を描き続けた。森田と共に僕たちは20世紀の終わりから21世紀の初めを生きた。なのに、これからはもう森田はいない。偉大な映画監督の死、ではない。それは映画の死に匹敵する。
   

 

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