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映画・演劇のレビュー

突劇金魚『漏れて100年』

2014-09-30 23:02:00 | 演劇
 こういう芝居をサリngさんが作る。今までの彼女とはまるで違う。戸惑うばかりだ。最後までフラットで押し切る。最初、しばらく見たときにその覚悟は知れた。だが、どこかで転調を用意するかも、とも思った。だが、しない。一人の男の100年間を凝視する。5歳の少年(山田まさゆき)が拾われてきて、育てられ、やがて、ひとりになり、死ぬ。

 世界が滅びた後の世界。廃墟と化した街から遠く離れて、山の中で暮らす仙人と呼ばれる女と、2人の少年。彼らの日々を淡々と追っていく。最初、登場人物はこの3人のみだ。どこまでも、この3人の話が続く。孤児を育てる女は、彼らにイノシシの肉を与えるのだが、年上の少年は、それは人肉ではないか、と疑い、拒む。ここから逃げて、誰か、他の人が住む場所を探そうとする。だが、そんなものはない。

 単純でわかりやすい話だ。特別な仕掛けなんか用意しない。想像通りのお話が静かに描かれる。日常のスケッチだ。それが100年間。やがて仙人は死ぬ。旅人と出会う。ここを離れて、旅する。しかし、やがて、また一人になる。最後は自分も死ぬ。

 孤島のような、八百屋舞台は不安定で、そこから下界を見下ろすシーンが何度かある。そこは、かつて自分が住んでいた場所だ。仙人に連れられて、この山の中に来た。冒頭のシーンだ。話はそこから始まる。小さなエピソードの積み重ね。丁寧にスライドで数字を1から100まで飛ばすことなく、見せる。100分の芝居で、100のエピソードを見せられた気分だ。(たぶん、エピソードは50くらいだろう。飛ばしたのではなく、数字を流したのだ。厳密に、各エピソードがその年を描いているわけでもない。こんなにも起伏のない見せ方をしたなら、単調すぎて眠くなるほどだ。でも、気にしない。別に途中で、何度か居眠りでもしてくれたら、という勢いだ。それでも支障はない。必要なのは、この退屈なまでもの日常なのだ。

 こんなにも寂しくて、でも力強い作品を作りあげた。最初にも書いたが、これは今までの作品とはまるで、違う。作り手の覚悟のほどがしっかりと伝わってくる傑作である。(もちろん、今までの作品が大好きなので、ああいうのはもうやらない、とは言われたら、困ってしまう。まぁ、そういうことはなかろう。でも、彼女の成長が見たいから、変わることは厭わない。でも、ほんとうはとても嫌だけど)


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