あのコンチャロフスキー監督の力作『親愛なる同志たちへ』の後で見るから、どうしても点が辛くなりそうだ。これもまた同じようにロシアの愚行を描く映画である。2000年にロシアで起きた原子力潜水艦事故が描かれる。すべてをウクライナ問題と重ねてしまうのはどうだか、とも思うけど、ついついそういうふうになる。(それにこれは2018年作品だし)、ロシアひどい、という感じ。このご時世、どうしてもそういうところから受け止めてしまうようだ。
それにしてもこの映画、制作国はなんとルクセンブルクとある。でも、プロデューサーはリック・ベッソンだし、ヨーロッパ・コープ作品。だからフランス資本なのだが、もちろんベッソンだから、フランス語ではなく全編英語だ。というか、この内容なら本当はロシア語でなくてはおかしいのだけど、ここは気にしないことにする。監督はトマス・ヴィンターベアなので期待した。だが、なんだかもたもたした映画で集中できない。テンポが悪く、何がしたいのやら焦点がぼやけていて、だんだん眠くなる始末だ。
冒頭の結婚式のシーンはあの名作『ディア・ハンター』を思わせる。(でもこれは2時間の映画だから、あの映画のようには延々とは続かないけど。)ここまではビスタサイズで描かれてその後本編となる潜水艦の出航シーンからはお決まりのようにシネスコサイズにスクリーンが広がる。(この映画をもしシネコンの劇場で見たなら、スクリーンは広がらずに、上下が下がってきて反対にスクリーンが狭くなるのかな? でも、これが潜水艦の話だから、狭くなった方がおもしろい効果を発揮するのかも)
この悲劇を明るみに出さないため隠蔽しようとする国家側の姿勢(なぜかプーチンは登場しない)や、なんとかして彼らを助けたいと思うイギリス海軍の将校(コリン・ファース)のお話をはさみながら、刻々と追い詰められていく潜水艦の乗務員たち、彼らの安否を気遣う家族の姿が描かれていく。それをスリリングに描くことが監督の腕の見せ所のはずなのだが、あまりに淡々としすぎていて、これでは何が何だかわからない。緊張感が持続しないのだ。一応これは娯楽大作映画のはずなのだが、そのルールが守られていない。そのくせ社会派映画では断じてないし。いろんな意味で中途半端なのだ。