中崎町の民家をそのままで、一部改装して、劇場仕様にして利用する。そんな狭い空間でこの芝居は上演される。30人ほど入れば満杯になるこの場所(劇場)そのままの路地裏にある小さなBARが芝居の舞台となる。狭さやロケーションも作品の力にする。こういうかたちでの芝居作りって、なんだかおもしろい。芝居と、現実が完全にリンクする。仕掛けは上手い。
ただ、お話自体があまりにたわいなく、これだけで90分というのはつらい。4人姉妹のお話として、もう少しドラマに奥行きが欲しい。死んでしまった3人が幽霊になって帰ってきて1人残された下の妹を励ます、という基本構造は構わないけど、ニセ母とか、常連の客とか、周辺のお話が彼女の生き方にどう影響するのか、いちばん大事なことはひとりぼっちの彼女がどう生きようとするのかで、そこをちゃんと描かなくては意味がない。なのに、たわいないお話だけを追いかけて、肝心の部分がお座なりになるのは、もったいない。
『ゴースト NYの幻』のような設定自体をどうこういうのではない。仕掛けはこれでいいから、コミカルなドラマ運びもそれでいいから、彼女が寂しい現実とどう向き合い、何を得ることになるのか、という大事な部分をもう少しちゃんと見せよう。この店を閉めたいと思っていたはずの彼女がここをひとりででもやりたいと思うまでの心の軌跡を描かなくては成り立たない。