とても丁寧に作られてあるし、よく考えてある。好感の持てる芝居である。勢いだけで見せようというのではなく、しっかりと、作品世界を練り上げていこうとしている。
しかし、残念だが<怖さ>が足りない。考えすぎてしまって理詰めで芝居全体が出来ているから、余白がない。とはいえ、完璧な芝居というわけでもない。どちらかというと突っ込みどころ満載の芝居だったりもするのだ。ダムの話にしても、家族のことも、今一歩のリアリティーがない。周囲の住人たちの嫌がらせにしても、あんな張り紙だけでは悪意は伝わらない。
それより何より、一番大事なところである母親が壊れていく過程に説得力がないのはつらい。夫とお金を貸してくれる男が別人だと思い、夫を拒絶していき、夫と同一人物である男を愛してしまうという設定の面白さが生かせない。
よく考えて作ってあるのだが大事なところでの詰めが甘いから、それ以上のものが描けないのである。お金ですべてを片付けてしまおうとする、というストーリー展開も面白いのだが、そこから生じる狂気が<怖さ>に繋がらないから、芝居の世界にのめり込めず距離を感じてしまうのだ。説明を超越するわけの分からない狂気が欲しい。
ラスト、大雨で流される家は「岸辺のアルバム」のパロディーなのか。考えてみたら、芝居全体もそうなってるような気がするが、気のせいだろうか?(今の若い人は山田太一なんか知らないよな)家族の秘密、というテーマを中心に据えて、あらゆる問題をてんこ盛りにした芝居だが、せめて視点を統一すればもっと見やすい作品になったはずだ。1人だけ秘密を共有できずにいた次女の視点から全体を描いたほうがすっきりした作品になったはずだ。(基本的にはそうなってるのだが)
茫洋とした風貌でとんでもないことをしてしまう真面目なのか異常なのかよく分からない父親(千葉哲蔵)がいい。彼と次女(安政由香)の対決は見ごたえがある。この2人をもう少し上手く描くと傑作になったかもしれない。全体の構成力が欲しい。あれこれやりたい事がありすぎて全てを見せようとするから消化不良を起こすのだ。とても惜しい作品だ。
しかし、残念だが<怖さ>が足りない。考えすぎてしまって理詰めで芝居全体が出来ているから、余白がない。とはいえ、完璧な芝居というわけでもない。どちらかというと突っ込みどころ満載の芝居だったりもするのだ。ダムの話にしても、家族のことも、今一歩のリアリティーがない。周囲の住人たちの嫌がらせにしても、あんな張り紙だけでは悪意は伝わらない。
それより何より、一番大事なところである母親が壊れていく過程に説得力がないのはつらい。夫とお金を貸してくれる男が別人だと思い、夫を拒絶していき、夫と同一人物である男を愛してしまうという設定の面白さが生かせない。
よく考えて作ってあるのだが大事なところでの詰めが甘いから、それ以上のものが描けないのである。お金ですべてを片付けてしまおうとする、というストーリー展開も面白いのだが、そこから生じる狂気が<怖さ>に繋がらないから、芝居の世界にのめり込めず距離を感じてしまうのだ。説明を超越するわけの分からない狂気が欲しい。
ラスト、大雨で流される家は「岸辺のアルバム」のパロディーなのか。考えてみたら、芝居全体もそうなってるような気がするが、気のせいだろうか?(今の若い人は山田太一なんか知らないよな)家族の秘密、というテーマを中心に据えて、あらゆる問題をてんこ盛りにした芝居だが、せめて視点を統一すればもっと見やすい作品になったはずだ。1人だけ秘密を共有できずにいた次女の視点から全体を描いたほうがすっきりした作品になったはずだ。(基本的にはそうなってるのだが)
茫洋とした風貌でとんでもないことをしてしまう真面目なのか異常なのかよく分からない父親(千葉哲蔵)がいい。彼と次女(安政由香)の対決は見ごたえがある。この2人をもう少し上手く描くと傑作になったかもしれない。全体の構成力が欲しい。あれこれやりたい事がありすぎて全てを見せようとするから消化不良を起こすのだ。とても惜しい作品だ。